犯人の正体はもちろん意外ですが、推理小説を読み慣れている人にはその意外性は決して高いものではありません。また、殺害方法も月並みで、推理小説的な興味は死亡発見時刻をごまかす為のトリックくらいのものです。セイヤーズの興味はむしろ人間の内面に向かっているようで、今作ではピーター卿が事件の関係者たち(=真犯人を含む容疑者たち)に温かい配慮を示しているのが目立ちます。次作からは彼の恋愛が描かれるのですが、その布石と言える作品ということなのでしょう。