写真撮影のバイブル アラーキーの写真が嫌いな方も
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荒木経惟さんが雑誌「アサヒカメラ」に一年に渡って連載した、写真撮影の心得をまとめたものです。軽妙な文体ですが、写真に対する著者の真剣さが伝わってきます。普段目にする荒木さんの印象に比べて意外と感じるかもしれません。
初版は1970年代です。都会の交差点に立ち、向こうから来る人の顔を撮るなどという「修業」は今では難しいだけでなく、危険ですらあります。しかし、目標とする写真家を模倣して模倣して追い越してしまえという考えは、写真に限らず他の技芸にも通じます。
本書を書いた三十代の半ばという年齢は、経験や思考が蓄積され一番精力に溢れている年代です。著者の写真集は一冊も持っていませんが、著書はあらかた読みました。その中でも最高の一冊と思います。
写真を撮る人だけでなく、写真を観ることが好きな人にもお勧めしたいと思います。芸術やスポーツなどでもそうですが、製作、演奏、競技を体験してみてはじめて分る見方もあります。写真を撮らなくても、撮る側の考え方を知ることで、写真を見る見方が広がると思います。
原著は長らくプレミア付きで取引きされていました。こうして文庫で再販されたことはありがたいと思います。