天才のそばに在ることの恍惚と不安(by太宰治)
★★★★★
本のタイトルを見てすぐ僕はサリエリを思い出した。
映画『アマデウス』に描かれたサリエリには、
天才のそばに在ることの恍惚と不安があった。
モーツァルトのそばにいたオペラの台本作家ロレンツォ・ダ・ポンテにも
同じ思いがあったのだろうか。
モーツァルトが天才作曲家であるという評価は揺るがない中、
モーツァルトの三大オペラである『フィガロの結婚』『ドン・ジョバンニ』
『コシ・ファン・トッテ』の脚本を書いたロレンツォ・ダ・ポンテは、
対等な立場で、仕事ができたのだろうか。
どんな気持ちで脚本を渡したのだろうか。
物を作る仕事の一端に携わる者のひとりとして
不安な気持ちでページをめくっていかなければならない一冊であった。