Ignition!
価格: ¥827
ブライアン・セッツァーはいわゆる前向きな人間ではない。問題は、このベテランギターリスト兼ヴォーカリストが一体どこまで後ろ向きになっていくのかということだ。40年代、50年代前半のジャンプブルースとスウィングの探求に90年代の大半を費やしていたセッツァーは、今またストレイ・キャッツのシンガーとして初めてファンを獲得した80年代前半のはつらつとしたロカビリーへ立ち返った。これまでも、オリジナリティーは彼の得意とするところではなかったが、ここでは作詞においてもその傾向がさらに強い。「5 Years, 4 Months, 3 Days」はデイヴ・ダッドリーのトラック合唱曲「Six Days on the Road」をちゃっかり盗んでいるし、ハートファンなら「Hell Bent」を誘導するリフに気づくだろう。それでも、ロカビリーのパイオニア、ジーン・ビンセントやエディー・コクランの代役をつとめるプレーヤー兼シンガーとして理想的な存在だ。それは、タイトル曲や「Hot Rod Girl」、特にこのパンキーアルバムのハイライトとしての 「Get 'Em the Ropes」で証明されている。「'59」では、「おれって時代遅れなんだな」と歌う。 セッツァーはアルバム一枚一枚の中に、自分の居場所をしっかり確認しているのだ。