1971年に発表されたマハヴィシュヌ・オーケストラのファースト・アルバムが、生き生きとした音質となり、ほかでは見られない写真を掲載してリイシューされた。この『Inner Mounting Flame』は、あらゆるジャズ・ロック・レコードの中でもベストの地位を争う作品だ。極限的な激情、優雅な静寂など、魂のほとばしりを描き出した本作の有無をいわせぬ力強さは、いささかも衰えるところがない。ヤン・ハマー(キーボード)、ジェリー・グッドマン(ヴァイオリン)、リック・レアード(ベース)は、ジョン・マクラフリン(ギター)のヴィジョンに完ぺきに同調しており、それまでソロで実績してきたスタンダードなジャズの形式を捨てて、迅速さ、熱っぽさ、結束力、相互作用をもたらし、インドの伝統音楽への本格的な傾倒を見せる。それでもきちんと統制された音楽になっているのだから驚きだ。これはビリー・コブハムの力量によるところが大きいだろう。自由奔放な変拍子が続出する中、コブハムのパーカッションはあくまでも安定しており、臨機応変でありながら決して出しゃばることがないのだ。
マクラフリンは魔法のような手際で多角的な音楽を聴かせてくれる――ジャズ・ギターの大家らしいテクニックや、フラメンコ、ブルース、インド音楽のスタイル、それにマイルス・デイヴィスやトニー・ウィリアムスの率いる独創的なジャズ・ロック・グループで磨いた革新的な手法など、実に多彩なプレイだ。もちろん、ディストーションやフィードバック、アリーナを揺るがすような大音響も忘れるわけにいかないし、マクラフリンの魂の師であるシュリ・チンモイの影響も無視できない。「The Noonward Race」、「Vital Transformation」、「The Dance of Maya」は時代を超越した音楽といえるだろう。(Peter Monaghan, Amazon.com)