悪書です。
★☆☆☆☆
子供向けに解り易く書かれていますが、惜しいことに、重大な欠陥があります。
日本=侵略国=悪 との思い込みで、史実を色眼鏡で見て、歪んだ史観を事実であるかのように表現しています。
そのため、子供たちに誤った現状認識を植え付けることになると危惧します。
国家間、民族間の鬩ぎあいや隣国中国の危険性、共産主義暴力革命の不条理を説明しなければ、子供たちは世界は公正で信義を重んじるモノと誤解してしまいます。
著者は、自著「民主と愛国」を薦めていますが、「日本という国」を読んでこれを読むと、戦後の論説を曲解するかもしれません。
私は、むしろ「日本人の境界」を薦めます。
根拠が何も示されていない
★☆☆☆☆
まず違和感があるのは、戦争のことを語りながら、日本がアジアの人々を戦死させたことを書かれてはいるものの、日本が戦争に突入した理由の1つである、石油輸入の禁止など欧米による包囲網のことが一言も書かれてないことだ。まるで、「日本人が全て悪い」という著者の主観的な前提ありきの内容。
戦争に関しても中立の立場で本書を読み始めたが、途中から内容が一方的すぎるのに気づいた。野球に例えると、審判の判定に不服で抗議した両チームのうち、片方のチームの言い分しか書いていないような感じだ。
例えば、創氏改名に関しても「昭和史20の争点」の韓国人である分担執筆者が韓国人にインタビューし集めた資料から、在日韓国人に対する創氏改名は決して強制ではなかったことを書いているが、本書ではなんの根拠も示さずに、創氏改名が強制的だったように書かれている。
「東京裁判」がなんであったかを語らずに、「東京裁判」を受け入れたのだから、中国からの靖国神社参拝反対は受け入れないといけない等、解釈に苦しむ内容が多い。
基本的に国の歴史の解釈というのは、他国の解釈と違って当然で、相容れない所があるのも自然な事だ。豊臣秀吉が朝鮮にとっては侵略者であっても日本にとっては有能な統治者であるし、フビライハンがモンゴルの英雄でも日本にとっては侵略者であるし、伊藤博文を暗殺した安重根は国際的には犯罪人だが韓国にとっては英雄だ。
私はこの辺のことに関する書物を100冊以上読んだが、本書の内容はそれらの書物から得た私の知識とかなりずれている。知識のない読者を狙って、意図的に意識を誘導しているのではないだろうか。日本には「言論の自由」があるからそれでもいいのだが、情報を正しく選択する能力が育つ前の子供を対象にした書物で、根拠を示さずこのようなことが書かれると、残念ながら非常に問題であると言わざるを得ない。
日本は困った国だというサブリミナル効果を狙っているのか、本書の表紙に描かれている子供は腕を組み困った顔をしている。著者がこの表紙にOKを出したという事に、我々読者は気がつくべきだ。
快著!書き出し最高!!
★★★★★
まずは書き出しから、信頼に足りうるものだとびびっときた。
第1章 なんで学校に行かなくちゃいけないの?
「毎日つまらねえなあ。やってられねえなあ。まずはそこから始めてみようか。」
確実に我々目線、エスタブリッシュの上から目線じゃないことがわかる!
納得させられる事実の引用と文脈の整合性。
中学生でも理解しうる自然な歴史の流れを理解できる。
これだけの内容をこれだけ要点だけを大つかみできる
著者の膨大な資料集成もうかがえる。
上の人たちの思惑や感情的なトラウマ、またそうした感情を利用して
どこかにもっていこうとする輩がこの手の議論を見えなくさせている今日この頃
それに対する明白な処方箋が示されている。
ちゃんとした本というのは脳がすっきりするものだ。
思想的背景の違いがある側からも、反論を組み立てる際に
それに対してリアリティをもてるか、というものが突きつけられる意味で
歴史観の形成の基盤となりうるビジョンを示しているといえる。
日本という国(がしてきたこと)
★★★★★
よりみちパン!セのシリーズは好きなので、
特に深い考えもなく、手に取りました。
中学生以上のすべての方へ、とありますが、
これは中学生が読むのには、ちょっと難しいだろうなあ、という印象。
私、中学生の倍以上生きていますが、1度読んだだけでは頭に全部入ったとは言えず、
何度か読み直そう、と思っているところです。
福澤諭吉の「学問のススメ」から始まり、日本という国が
どういう方向に国を、国民を持っていこうか、という方針が見えてきます。
その中で、東洋と西洋、植民地と植民地を支配する側、
主人と家来、いろいろな側面が書かれており、とても勉強になりました。
靖国神社に参拝すると、どうして中国や韓国は反対するのか。
それにはちゃんと理由があったんですね(当たり前ですが)。
そして、沖縄で米軍が日本人中学生をひき殺してしまった事件で
「で、右翼は何してたの?」という著者のインド人の友人の意見など、
私も「言われてみれば!」と思いました。
知らない、というのは本当に怖いこと。
でも、なんだか知るのが面倒くさいし、知ったところでどうなのさ?と
避けて通ってきた話題でもあります。
もし、子どもが生まれたらなんて説明するの?
聞かれたらどうする? 私の意見は?
そんな時、この1冊を読むといいんだと思います。
他にもいい本はたくさんあるでしょうが、私には分かりやすく
適度なボリュームで、お話も理路整然としていてよかったです。
中学生にはちと難しいと思いますが、大学生以上くらいなら
読んでおいて損はないと思います。
読んでおいて、ひとつの考えとして頭の中に入れ、
その上でこの本に対する自分の考えを持つ、というのも
いいのでは、と思います。
学校史+戦後史
★★★★☆
戦時戦後史だけの内容を予想していたが前半は学校史とでも呼ぶべき内容に力が入れられておリ義務教育(昔は脅迫教育と呼ばれた)が如何なる理由で如何にできあがったか、当時の親たちの反応はどうだったか、当時の生徒の反応はどうだったか、寺子屋の授業形式はどうだったか・・・などといった事が語られ非常に興味深い。私としては中後半の戦後史よりこちらの方が面白かったくらいだ。どうも本書は本来中学生くらいの年齢を対象にしているようなので、その意味でも子供にとって最も身近な学校から入るというのはツカミとしてよくできているかもしれない。