そんなブルースになおも未練を残すキャニーだが、彼の心はすっかり離れていた。失意と怒りの日々を送るキャニーは過去を振り返る。母親と子どもたちを捨てて出ていった父親。恋人と暮らすレズビアンの母親。そこから、キャニーの自分探しの旅が始まる。摂食障害センターの医師や、取材で親しくなった有名人や、友だちや家族との交流を通して、キャニーは新たな人生に向かって歩きだしていく。
ヒロインのキャニーは、本人の言葉を借りれば、マーサズヴィニャードの海のような深いグリーンの瞳を持つ、孤独で愛に飢えた28歳。アリー・マクビールとブリジット・ジョーンズを足したくらいの…体重がある。ひねったユーモアと柔らかな心であれやこれやの問題に立ち向かう姿には、誰もが共感を覚えるだろう。
題名や表紙から受ける印象に反して、本書は愛すべき女性キャニーの成長物語だ。キャニーの語り口はウィットに富んでおり、華やかな芸能界の様子や、ポップ・カルチャーもちりばめられたぜいたくなエンターテイメントに仕上がっている。(小泉真理子)