イギリスの児童文学です。孤児のアンナは、夏休に療養のため海辺の
小さな村に滞在し、そこで不思議な館とそこに住んでいるという少女、
マーニーと出会います。2人は互いにひかれ合い、無二の親友となるの
でした。ひと夏だけの、でも永遠の。
この物語の魅力は、詩情あふれる風景描写やマーニーのキャラクターも
さることながらアンナの心とその変化にあると思います。10代はじめの
やりきれなさを体験した人なら、アンナの気持ちや行動に共感を持って
読めるでしょう。嫌いなわけではないけど、何だか鬱陶しい大人たち。
誰とも付き合いたくない。ひとりがいい。
物語の後半、アンナは夢のようなマーニーとの時間から現実へと戻って
きます。そして、思春期の階段を1歩登り、現実の世界をしっかりと
生き始めます。この部分がとてもいい。マーニーとの濃密な時間は、
アンナの心の殻を溶かし、成長させるのに必要だったのだと思います。
最後には、謎が解き明かされます。でも解き明かされるのは事実関係だけで、
マーニーとアンナの心については、読者に委ねられます。読んだ後、
いろいろと空想に耽ってしまい、しばらくは何も手につきませんでした。
是非読んで欲しい物語です。