愛憎物語
★★★★★
子どもの頃に読んだものは児童書らしく特に残酷なエピソードがはぶかれていたせいか、単に虐待される子の成長ぶりを書いた読み物と思っていた。
今回、窪田般彌訳を読み直してみたが、これは愛憎の物語。母親は境界例の傾向、にんじんには不安定な精神状態と地に足をつけたしたたかさがしっかりと同居し人間らしく複雑に書かれているのが面白い。終始、一貫したストーリーではなく人間性を浮き彫りにする「ロダンが彫刻する、ように書く事(あとがき「にんじんの秘密」より)」が成功していると言える。またこんなに魅力的なルナールによる挿絵は今回初めて知った。
是非、他の方による訳も読み比べてみたいと思った。
心に刺さっているものがたり。
★★★★☆
小学生のころ、祖母が「にんじん」の幼年向けを買ってくれました。しかしハッピーな場面もなければ微妙な親子関係・・・「おばあちゃんは何故こんな本をくれたのか」不思議でなりませんでした。子供には嫌悪感の残る本でしたから。
やがて一通りでない姻戚関係から祖母と行き来がなくなり、26年を経て今年の夏、彼女が亡くなったことを兄弟から知らされました。思えば夏の頃から夢に出てきていた祖母は、会っていた頃と同じに微笑んでいました。「彼女はこの本を読んでいたのか」問うことは出来なかったけれど、余計に思い入れの深い作品と成っています。
祖母の死を知らされて数日後、ふと寄った古本屋で目に飛び込んできたこの一冊。幼年向けには省かれていた鮮烈なエピソードも含まれており、感慨深く読みなおしています。
にんじん物語
★★★★★
なぜか気になる作品です。
小学生のとき、中学生の時、大学生の時、大人になってからと何回も読んでいますが、
この作品の真意はいまだに汲み取れません。
ただの残酷物語なのか、ゆがんだ愛情なのか、にんじんの妄想なのか・・・。
深読みするといろいろな解釈ができます。
私としては、ルナールの誇張した自伝的小説で、母親のしつけに名を借りた少しゆがんだ
ストレスの発露と、そんな母親へそれでも母親の無償の愛情を期待するにんじんの物語かな、と。
文章は平易で読みやすいです。久しぶりに読んで、作者の意図を想像しながら読むのも楽しいなと感じました。
母子の愛
★★★★★
にんじんのお母さんはにんじんにかなりきつい態度をとっています。
にんじんの方にも少し残酷な面があります。
にんじんも、お母さんも、表面上は異常な人に見えるかもしれません。
憎みあっているように見えるかもしれません。
でも、このお話は実母が継母のように子どもをいじめるとか、子どもが異常者だとかいう類の話ではないと思います。
この母子は本当は愛し合っているのだと感じました。
ちょっと、表現が下手なだけだと思うのです。
ただ「かわいそうだな」と思う以上のものがある作品です。
子供には絶対読ませてはいけない!
★☆☆☆☆
まだ児童虐待が世間に知られてない頃、児童虐待を「しつけ」だと言い張った大人に虐げられた子供の話。
ストレートに読むのはオススメできない。
「こんな酷い話が肯定的に読まれた時代があったんだ」「この話は間違っているのだ。」と反省の意味で読むのならオススメ。
子供には絶対読ませてはいけない!