主人公だけが達成した最後の試練は、きっと事故をおこした主人公の痛みと悔しさの裏返しでもあり、物語は傷からの回復の過程でもあります。でも試練のねらいは、彼に回復の機会を提供するだけではありません。難題とのぶつかりのなかで、こどもたちはそれぞれに今まで知らなかった新しい価値や世界を見つけ「わたしはこれだ!」と宣言するように、与えられた課題のなかだけで評価されることへのNO!を表現します。
子どもたちにたちはだかり、一言も言いませんが、実は事故の重みを一方で体感させながら、逆にその現実を活かして子どもたちを強く豊かに自分らしくさせようとたくらむ校長、でも手のひらで踊るだけでなく、校長をぎゃふんと言わせる子どもたち。そんな健康さも感じられる豊かな絵本だと思います。
どこか田舎の小学校なのでしょうか?
舞台になっている小学校には校庭から続く"あそびば"があります。
"あそびば"は、手の加わって居ない、自然のままの雑木林。
冬のある日、その遊び場でふざけて怪我をしてしまった子が居たので、鍵を掛けられ、遊ぶ事が出来なくなってしまったのです。
何とかもう一度、"あそびば"の鍵を開けて貰えるように校長先生に頼みに行くと、校長先生はある"条件"を出してきます。
子ども達の知恵の絞り方、校長先生のちょっと難しくて難しすぎない"条件"、子ども達から逃げないで、正面から渡りあう姿勢が、いい大人像だなーと思わせます。