おいしいパンと季節の恵みにうっとり
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「うーっ。おかあさん、このパン作って!河童のパンっ。ぜったいタベタイよぅー!」と子供二人が口をあけてまるで雛鳥みたいに声をはりあげます。
「わ、わたしだって。春のかおりのヨモギあんぱんがたべたいっ!」
この本を読むと、あなたもきっとうなります。三日月さんのパン工房からただよってくる焼き立てのパンの香りが、鼻をくすぐる錯覚にふらふらします。魔法にかかったように、パンが食べたくてたまらなくなります。森の動物たちの注文でつくる不思議なパン、ロマンチックなパン、そして季節の香りのパン。お話に出てくるパンは、どれもこれもおいしそう。
でも、おいしそう、というだけじゃありません。心憎いまでに、このパンが季節の恵みにつながっているのです。十五夜の月の光を入れたムーンライトブレッド、木枯らしが干して甘くなった大根のサラダが入ったサンドイッチ、村のりんごで作ったアップルパイ、等。シンプルだけどその季節のとっておきのものをいただく楽しみ、子供たちにも是非伝えたいことです。
一つ一つの章が長すぎず、短すぎず、ロマンチックな挿絵もあって、中学年の子供たちが一晩に一話読むのにぴったり。我が息子らも、次の章でどんな季節のどんなパンが登場するのか、わくわくしながら夜の読書タイムを楽しみにしていました。