冬の夜の銀座に鈍く光る青銅色…
★★★★☆
青銅の機械人間が狙うのは,機械の塊である時計ばかり―
本作は,冒頭から硬質なイメージで始まります。機械いじりが好きだったかつての少年たちは,前作とは違った展開に引き込まれること,請け合いです。
本作も二十面相との対決ではありますが,前作までとは異なり,初めて「チンピラ別働隊」が登場します。この活躍も,本作に一風変わった彩りを添えています。
また,子どものころには読みとばしていたのですが,本作は戦後を舞台としているようです。「チンピラ別働隊」も,その時代の雰囲気を反映していることが,今となってはよくわかります。
本作は,二十面相の盗みのほかに,地底の秘密部屋・抜け道・爆発,といったワクワクさせる要素がふんだんに盛り込まれています。僕もかつては(そして今も),面白さに一気に読破しました。二十面相の「最期」さえも,「きっと何か仕掛けがあるに違いない」と思わせるに十分な筆致です。
こうして,かつての少年たちは,シリーズの深みにはまっていったのでしょう。
今読み返してみても,その充実感・期待感は,色褪せることがありません。
粗製濫造の謗りははありますが,やはり乱歩は偉大であったと思うのです。