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なくしてしまった魔法の時間 (安房直子コレクション)

価格: ¥2,100
カテゴリ: 単行本
ブランド: 偕成社
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なつかしいあたたかさと、切なくなる寂しさと ★★★★★
指でこしらえた窓や、着物のたもとの中に広がっている風景の、鮮やかで美しいこと。安房さんが垣間見せてくれる異界の景色に、ほうとため息をついて見とれてしまいます。なつかしいあたたかさと、切なくなる寂しさが、くるん、くるんと心の中で回るような、不思議な気持ちに誘われます。

本書には、「さんしょっ子」「きつねの窓」「空色のゆりいす」「鳥」「夕日の国」「だれも知らない時間」「雪窓」「てまり」「赤いばらの橋」「小さいやさしい右手」「北風のわすれたハンカチ」と、巻末に八つのエッセイが収められています。作品で特に忘れられない(気に入った)のは、次の四つかな。

サンショウの木の中に住んでいる、お手玉の好きな女の子の話――「さんしょっ子」
耳のお医者さんのところに、耳の中に大変なものが入ってしまったと、ひとりの少女が飛び込んでくる――「鳥」
雪の中、おやじさんとたぬきが出しているおでんの屋台に、不思議なお客が訪れる――「雪窓」

遊び相手のいないお姫さまが、ああん、ああん、うわあ、うわあと泣いている場面から話が始まっていく――「てまり」

それから、安房直子コレクションの7冊では、どの巻でも何かしら素敵な話と出会うことができましたが、なかでも第4巻「まよいこんだ異界の話」と、第5巻「恋人たちの冒険」の2冊に読みごたえを感じました。

不思議な魔法が働いている安房さんの作品世界。またしばらくしたら出かけて行って、遊んでみたいなあと思います。

日常と隣り合わせに魔法の時間はある。 ★★★★★
「さんしょっ子」「きつねの窓」「空色のゆりいす」など11の短編とエッセイがはいっています。どの童話も透明な悲しさが漂い、それでいて読んだあとには、暖かいランプの明かりを心にぽっと灯されたような気持ちになります。大人になっても、いえ、不条理な世界に住んでいるからよけいに安房直子のファンタジーの世界は人の心を惹きつけるのかもしれません。

指でひしがたの窓をつくってのぞけば、数えながらなわとびをとんでみれば、しゃがいものシチューやホットケーキ、おだんごやおでん、ごく日常的なもののなかから、魔法の時間へするっと滑り込めそうな気がします。
一枚の絵の中に短編の主人公が描かれている北見葉胡のイラストも素敵です。