インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

世界の果ての国へ (安房直子コレクション)

価格: ¥2,100
カテゴリ: 単行本
ブランド: 偕成社
Amazon.co.jpで確認
一度読んだら忘れられない物語・・・ ★★★★★
安房直子コレクションⅠからⅦで、私が一番好きな一冊です。

一度読んだら忘れられない不思議で悲しい物語が10編はいっています。

忘れられないのは、物語の不思議さにもあるのですが、その場面が、あざやかなイメージによって、たとえば、真っ青なお皿の上に増え続ける丹頂鶴や、金のうろこの魚がびっしりと押し寄せてきたような夕日、静かに静かにふくらんでいく月などによって、心に深く刻み込まれてしまうからです。

その視覚や聴覚にうったえる言葉のイメージのことは、『言葉と私』というエッセイにつづられています。あふれるような豊かな言葉は、安房直子さんの天性の感覚のように思っていましたが、プラスその言葉を磨き続けるという努力があったのだと知り、深く感動しています。

また、これらの物語には、終わりがないように思えます。読者は、読み終わっても物語のその続きを想像せずにはいられません。たとえば、『木の葉の魚』の三人は、どこへのぼっていくのだろうかとか、『銀のくじゃく』のはたおりは、旗の中に閉じ込められたままなのだろうか、とか、本を閉じた後もどこか怖いような物語の世界から容易にぬけられないのです。

それが物語の魅力というものでしょうか・・・。

金糸銀糸で紡がれた物語の中、ひときわ美しくきらめている青の魔法 ★★★★★
安房直子さんが話に描き出す色遣いは、とっても綺麗。なかでも、空の青につながる青色の透明感に惹かれます。作品の中の青い色を見ていると、すーっと吸い込まれていくような気持ちにさせられます。その透き通った青のイメージが美しく描き出されていたのが、本巻収録の「青い糸」。話に出てくるあやとりが形作る青い扉の向こう側に、どうかすると連れていかれるような錯覚を覚えました。

港町の小さな骨董店を舞台にした作品、「火影の夢」も面白かった。現実が夢の中に引っ張り込まれていくというか、夢が現実の中に入り込んでくるというか。一体どっちが現実でどこからが夢なのか分からなくなってくる話には、一種なぞめいた美しい魔法がかけられているような味わいがあって、ぞくぞくしながら頁をめくっていきました。

本巻の最初に収められた「鶴の家」。さながら中国の幻想綺譚の魔法を見せられたような、何かそうした話の風韻を感じました。料理の器に鶴の絵が描かれているのを見れば、ふっとこの話のことを思い出すこともあるんじゃないかと、これも印象残る作品です。

巻末の単行本初出一覧を見ると、この話が収められていたのは『白いおうむの森』という作品集なんですね。安房直子コレクション第1巻『なくしてしまった魔法の時間』にも、この作品集から「雪窓」「てまり」のふたつの話が採られていて、いずれもとても気に入った作品でした。できれば、「白いおうむの森」という話も読んでみたかったなあと、本コレクションの中に選ばれなかったのは残念です。

安房直子さんのエッセイ。本書には、「シャガールの絵の中の鳥」と「言葉と私」が収められていました。ふたつとも、とても読みごたえのあるエッセイでした。収録作品に優るとも劣らない興趣を感じました。安房さんの作品に親しんだ後で読んだということもあるのでしょうが、すっと心に響いてくる文章。なかでも、「言葉と私」のエッセイが素敵。安房さんが、話を紡ぎ出す際に心にとめている言葉の置き方ですとか、言葉に対する感覚を磨いてゆく姿勢の真摯さに、はっとさせられました。

本巻収録作品 単行本初出一覧
「鶴の家」「長い灰色のスカート」「野の音」――『童話集 白いおうむの森』(1973年)より
「日暮れの海の物語」「奥さまの耳飾り」――『日暮れの海の物語』(1977年)より

「木の葉の魚」――『木の葉の魚』(1978年)より
「青い糸」「火影の夢」「銀のくじゃく」――『童話集 銀のくじゃく』(1975年)より
「野の果ての国」――『童話集 遠い野ばらの村』(1981年)より