個人体暴力だけでなく、構造的暴力をも批判する
★★★★★
平和研究のもはや古典的書。
ガルトゥングの主要な論文が4本納められている。
筆者は、通常の暴力(個人的暴力)以外にも、構造的暴力が存在することを指摘する。
構造的暴力とは、例えば完全自由市場のため、貧しいものが飢えて死ぬような場合である。
これまでの平和研究は、顕在化しやすい個人的暴力ばかり分析してきたが、構造的暴力の分析も重要である。
個人的暴力と構造的暴力とは、一方をなくそうとすると他方に頼らざるを得ないというジレンマが発生しがちだ。
しかし、だからといって暴力の廃絶を諦めるのではなく、暴力をなくすよう努力すべきだ。
構造的暴力にスポットを当てたのは興味深い。
ただし、都合の悪いものをすべて『構造』におしつけてしまうようにもなりかねず、そこら辺には注意も必要だと思った。
また、筆者の帝国主義論では、中心国と周辺国とを非常に単純な構図で論じていたが、現実の関係はあのように単純なのかは疑問が残った。(実際筆者は仲介国をあとで入れているが、それにしても単純な構図には違いない)
しかし、全体としては薄くてまとまっており、良書である