この現象に対して、ボーアらは「観測する行為が波動を収縮させ粒子にする。そして、粒子は確率的にしか存在しない」との解釈を提唱した。言い換えると、もしあなたが粒子だとするとその存在は確率的となり、たとえば「冷蔵庫の前にいる確率70%」「温泉につかっている確率30%」のように存在し、母親に冷蔵庫の前でつまみ食いをしているのを「観測」されるまでは、ひょっとしたら温泉につかっていたかもしれないということになる。
『シュレーディンガーの小猫たち』(原題『Schrodinger's Kittens and The search for Reality』)ではこの2つの穴の実験のパラドックスを、シュレーディンガーの猫を用いて視覚化し、光の本性についての古代から現代に至る研究成果を科学史的背景を交えながら紹介。光よりも速く過去に向かって伝わるシグナルによってこのパラドックスが解決されるとする交流解釈を紹介する。重厚な解説本であり読みごたえ十分だ。(別役 匝)