翻訳家を志す者の必携書
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この辞典のなかで、「本編」として説明されている「新編英和翻訳表現辞典」をもう3年間愛用しているが、この「基本表現・文法編」もかなり有用である。
翻訳で迷うのは、中学生でも習っている、簡単な単語が多い。つまり、学生時代に覚えた辞書のほんの一部の訳語がしっかり頭の中に澱(オリ)のようにこびりついていて、その澱が翻訳に邪魔をするのだ。つまり、滑らかな日本語にしたい訳文をぎこちない物にしてしまう。
受験英語の弊害と言えようか。ちなみにこの辞典で「-ish」を引くと、2ページ半に渡って延々と訳すときの考え方と訳例が記載されている。一方、翻訳家の利用度が高い「ランダムハウス英和大辞典」第二版での説明はほんの9行。
もちろんプロの翻訳家はこの9行で、自分の創造力と想像力で翻訳するのだろうが、学習者は先輩の訳例を辿るしかない。だからこの「英和翻訳表現辞典」に書かれている訳例は本当に貴重なものとなる。そして自分なりの表現を模索する刺激にもなっているのだ。
前述の「本編」とこの「基本表現・文法編」はセットで座右の書である。
辞書とはまた違った辞典
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ある新聞に紹介されていたので購入しました。英和辞書やイディオムにも載っていない言い回しを口語的に表現されています。英語学習の時には、こちらの辞典もそばに置いています。
どこから読んでも面白い
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この本は、翻訳を専門とする方々はもちろんのこと、いわゆる直訳(英和辞書の訳語のツギハギ訳?)に違和感を覚えたり、不安を感じられる(私を含めた)一般の方が読んでも、とても有益な内容が、これでもか、とばかりに解説してある、素晴らしい本だと言えます。訳文の適・不適に関する説明がなされた解説書(できれば辞書形式で)が何かないかと捜していたところ、たまたま目に付いたので、とりあえず、購入してみました。
本書を2回通読して感じたことは、いくつもありますが、なんといっても、読み物として、非常に面白い。例文の質・レベルも高く、当然のことながら、訳も流麗。さらに、「原文の順序通り訳す」(はしがきp.4)とか、「これは英語でなんというのだろうと考える習慣を身につけておく」(p.27)「英英の定義を利用して、具体的な説明を加える」(p.47)などを始めとし、どのページを開いても、何かとてもいいことが書いてある、といった感じで、和訳に詰まったときにとても重宝します。プロの迫力も随所に感じられます。立ち読みしてから購入をお考えの方に、お勧め箇所を1つだけ挙げるとすれば、pronoun(pp.184-86)の項を読んでみてはいかがでしょうか。
ただ、些細な欠点も、少しだけあるように思いました。たとえば、訳例の太字の施し方に一貫性がないような気が...。また、編者の方は「文法的」と仰られておられますが、説明があまり文法的ではないことなどが挙げられます。さらに、欲張りですが、できれば例文に出典を明示して欲しかった。(その前後も読んでみたい)が、いずれも本書の価値を損ねるものではありません。(ただ、誤植は少し多すぎます)
久々に出会えた、良心的な一冊です。
和文英訳にも有効
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辞典と銘打っているが、読み物のように頭から読んでいっても楽しい。
学生時代の試験で、本当はこういうことなんだろうけど勘で訳したと思われてバツになるであろう恐れから、しぶしぶ辞書の訳語を当てはめたしっくりこない回答をしていたことがあったが、いまこの本を見て「やっぱりあれでよかったんだ」とうれしくなった。
本書の説明で簡単な例をあげると
「an old man with a long white beard」を「白いひげを長くのばした老人」とか「long leg」を「すらりと伸びた足」というふうに品詞を変換してかまわないのだそうだ。
また、ひとつの簡単な英単語に対して、状況に応じた多くの訳語をあげているので、和文英訳のとき安易に和英辞典に頼らず考える土台をつくるのに大きく役立つことは間違いない。
ただひとつ気になったことをあげると、「〜と訳していいのではないか」など、著者の独断的で自信のない書き方をしている箇所が散見されること。これは欠点(著者の独断)とも、長所(辞書でも何でも鵜呑みにするなという諌め)ともとれるので減点対象とはしなかった。星5つ。