「まえがき」にも、当該辞典の成立過程について述べられ「折角作るのであれば単に『読むための辞典』に終わらず、英語を読む際常に座右に置いて『引くための辞典』として、一般の英和辞典と同じ規模のものにしようということになり幾多の変遷を経て今日に至った」とあり、本来「引く」ことより「読む」方に重きを置いた辞典であることが示されています。
この辞書、実際に使って思うのは、(「まえがき」にあるこの辞典の特色として説明されている通り)語義欄に「わかりやすくできるだけ物語風に」「意味の変遷」が列挙されてあるのを「語源と関係付けながら」読む必要のある辞書だ、ということです。
語源と今日用いられている一般的な語義との間に隔たりがあるほど、その橋渡しが必要になり、その橋を架けるのになかなか骨が折れます。「意味の変遷の物語」を想像力を働かせつつ時間を取って、読み取る必要があるのです。
大修館書店の「英語語義イメージ辞典」(見出し語数約3千)では、著者がその橋渡しの労をとって、読者は用意された橋を渡るだけで良いのですが、当該辞書(見出し語数約5万)では、橋の素材も、橋のおおまかな図面も用意されてはいるものの、橋そのものは自分の力で架けることが求められています。
なかなか大変な作業が求められますが、それでも、研究社の「英語語源辞典」に比べれば、ずっと橋を架けることを楽しむことのできる辞書だと、私は思います。