義家は、複雑な家庭環境の中で傷つき希望を失った不良少年だった。北星余市高校でのひとつの出会いまでは。先に生まれただけで威張り散らす「先生」ではなく、教え導いてくれる「教師」との出会いが、不信感や絶望で固められた著者の心を溶かしていった。現在、義家は母校の「教師」となり、かつての自分がしてもらったように、心傷ついた子どもたちに自分自身をさらけだしてぶつかっていく道を選択した。本書は義家の自伝であると同時に、一つひとつのエピソードが読むものを引きつける物語でもある。
本書のテーマは「夢」である。著者は、不良少年だった頃には抱けなかった自分自身に対する夢を、恩師との出会いによってはじめて抱けるようになった。夢を抱けるように、自分自身を信じられるようにと、がむしゃらなまでに子どもたちに向き合う義家の真摯かつあたたかい姿勢が伝わってくる。
本書の舞台である北星余市高校については、生徒たちの写真と文章で構成された『いま君が輝く瞬間』、十年以上取材を続けたテレビディレクターによるルポ『よみがえる高校』などの本がある。本書と合わせておすすめしたい。(山下聖隆)