類書がないから……
★☆☆☆☆
決定的に物書きとしての資質に欠くライターの仕事だな、というのが偽らざる感想。
本人はそれこそ「エスプリ」を効かせているつもりなのかも解らないが、凝り固まった私見による
本筋からの逸脱(隙あらば、すぐに得意分野の軍事方面に逸脱)、自己正当化の言説が目立つ。
正直、不快なレベルの文章力。「個人的には」と前置きすれば、何を書いても許されると思っているようだ。
皮肉にもなっていない感情的な他者批判(特に日本のキー局テレビ局員や官僚。アメリカ人などに対して)などは、
「あぁ、可哀想に。この作者もそういう勝ち組になりたかったけど、なれなかったから、
恨んでるんだな」という思いすら抱く。皮肉を皮肉として書ききれないライターは、お里が知れる。
同じようなことでも町山智浩とかなら、もう少し上手く書くものだが。
肝心の本筋も、文庫化に関して改稿がほとんど行なわれておらず、章の最後にカッコつきで
「(現在は修了)」などと、フォローにもなっていないフォローがあったりする始末。
読んでいる最中に何度ズッコケたことか。結局加筆されたのは最終章だけで、
そのあたりの放置具合もいただけない。
しかるにこの本が、文庫化までされているのはなぜか……と考えれば、「類書がない」という
一語に尽きる。書き手の主観満載の部分は極力飛ばし読んで、データと事実関係の表記だけを追えば、
フランスに伝播した日本オタク文化の年代記としては、資料になるからである。
しかし、それだけだ。
フランスとサブカルチャーに通じて、何より「文章がうまく、筆致が冷静である」書き手の類書が
もし出てくれば、この本はたちまち駆逐されるであろう。しかし、残念ながらその気配はない。
全くこの人、いいとこに目をつけやがったな、と思うより他ない。
どんどん類書が出てきて、この本(と筆者)は駆逐されてほしいが、現状「ない」のだから、仕方ない。
それまでは、フランスでの日本サブカルチャー伝播に関する資料としては、
泣く泣くこれを参照するよりないであろう。
類書よ、出よ!
そうすれば多分、10年、売れる。
アメリカ同様にさんざん改竄された内容をみてきたフランスのオタクたち
★★★☆☆
アメリカのオタクやマンガ,アニメなどについてはよくつたえられているが,フランスのオタクの日本語での紹介は貴重だ. アメリカ人は文化に対しては保守的で,マンガやアニメもアメリカナイズされなければうけいれられなかったが,ヨーロッパでは… ということだが,フランスでもやはり日本のマンガやアニメは,暴力シーンを中心に,さんざん改竄されなければうけいれられなかったようだ.
原作は 1998 年に出版されているのでだいぶふるいが,文庫として 2009 年に出版されるにあたって,ジャパンエキスポなど,最近の事情についても書かれている. しかし,そこにそれほど目をひく内容があるわけでもない.
これもフランスの一面
★★★★☆
ずっと前に買っていたのですが、ついに読破しました。
コスプレのフランス人を見る度に、
私の知らないフランスが
まだまだあるんだなと想っていたのですが、
その点が、少し氷解しました。
海外での日本のマンガ・アニメ等についてよく調べられた傑作です!
★★★★★
この本は98年に単行本として一度出版されたものに今回加筆し、文庫化したものです。前の本はタイトルがちょっと当時は文字通りオタク向けみたいに思えましたが、中身を読んでみると日本のアニメやマンガが海外、特にヨーロッパ各国に流通していく過程や文化的な摩擦、番組の一方的な改変放送の問題などを非常にきちんと調べ、現地で日本のアニメやマンガを扱う店を開いている人の実情を詳しく紹介してくれるとても真面目な、中身のある本だという印象を受けました。「文化」というものについても作者が自らの主張するところをはっきりと述べており、また、日本では一方的に美化されることの多いヨーロッパの「格差社会」の実情についてもそれらの実態がこの本を読んでいくうちに感じ取れるようになっています。
あれから10年が経ち、日本のマンガやアニメが海外で絶大な人気を博し、ニッポン文化の代表として評価されることは今やさして珍しくないほどになり、現在ならこのタイトルでも以前ほど違和感は感じない時代になったかもしれません。今回の文庫化で一章を追記し、フランスをはじめとしたヨーロッパのそれらの人たちがその後どうなったかを改めて紹介し、今後日本や海外でオタク文化がどうなっていくかについても予測を述べています。
繰り返しますが、この本はオタクという「特殊な」人について述べただけの本ではありません。日本から海外へと発信される「文化」とその過程でのさまざまな事情について真面目に調べて書かれたとても価値ある本です。今改めて読んでみてもとても面白い本なので前の本を読んだことのない人も、ヨーロッパ各国の社会や実情について興味のある人にもおすすめします。