あとがきに共感(笑)
★★★★☆
物語は、前のお二方が素敵に解説してくださっているので、省く。エンとジンファ、東の巫女様のファンは、ぜひどうぞ。
あとがきに、今さんのお茶を飲むときのクセが書いてあった。いつも湯飲みの底に一口分、お茶が残っていないと心配だとか。実は私もそうなのだ。別に災害や断水を体験したわけではない。真夏に、さる城下町を歩いていて、自販機が見つからなくて困ったことがある程度。そりゃ景観保存地区に自販機は置けないよね(笑)。しかし、その後、次の飲み物を手に入れるまで私のペットボトルは決して空にならない。
書きながら思った。湯飲みや水差し、壷なら「魔法の」とつけられるが、ペットボトルでは雰囲気でないね。
命の水を求めて
★★★★★
中国に似た不思議な世界が舞台。
各地で水源が枯渇していく中、生きるため人々はあらゆる代償を払い水を得ようとするが―。
エンやジンファなどお馴染みのキャラをはじめ、水を巡る人々が織り成す珠玉のファンタジー第3弾。今回は4話が収録。
水が減らない不思議な水さしと盗賊の因縁を描いた『盗賊の水さし』。
大国に利用され忌まわしい風習に縛られる少数民族を描いた『苦い水』。
水の乏しい町で水売りになった少年の数奇な運命を描いた『浄土の水売り』。
水の豊かな平和な町で突如凶事に見舞われる双子の姉妹を描く『二つの井戸』。
どれも良い話ですが、強く印象に残ったのは『浄土の水売り』。
主人公の少年・サンジンは病気の家族のため、不吉とされる「浄土の水売り」から水を買ってしまい…。
水売りの大人達の強欲さや非情な行いがとてもリアルでゾッとします。
その反面、サンジンら子供達の純粋な優しさが一層際立って見えて切ない。
全体的に暗く重い話ですが救いのあるラストで良かった。サンジンに幸あれ。
私も災害により長期の断水を経験した事があります。
水の出ない生活は何と不便でストレスの溜まる事か…。
水がどれほど大切かを思い知らされました。
この作品はファンタジーだけどリアリティがあります。
温暖化などで地球がおかしくなってきている今、この物語の世界が現実になる日がいずれ来るかもしれませんね。
水にまつわるオリエンタル幻想綺譚集
★★★☆☆
『岸辺の唄』『雲を殺した男』に続く、「オリエンタル・ファンタジー」シリーズの第3弾。水にまつわる中華綺譚のよう話が四つ、収められています。
話の器に盛られたエッセンスは詩情にあふれ、素敵な香りを漂わせたもの。もったいないなあ、惜しいなあと思ったのは、話の流れが分かりづらく、登場人物の関係がややこしかったこと。著者の最近の「百鬼夜行抄」シリーズでの話の分かりづらさを、本書でも感じました。
収録作品は、「盗賊の水さし」「苦い水」「浄土の水売り」「二つの井戸」の四篇。読みながら、水にまつわる次の物語を思い出しました。ユルスナールの『東方綺譚』所収の「老絵師の行方」。泉鏡花『夜叉ヶ池』。岡本綺堂『影を踏まれた女』所収の「清水の井(いど)」。本作品集と通じる水の音、水の響きがあると思うので、興味を持った方はどうぞ。
四つの話のなかでは、ややこしいストーリーではあったけれど、二番目の「苦い水」が一番よかった。主人公のランが、「百鬼夜行抄」シリーズの飯嶋律の面影を宿していたこと。SF色とファンタジー色とに彩られた、不思議な味わい深さを感じたこと。このふたつの点で、これは素敵な物語でした。