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迷宮百年の睡魔 (幻冬舎コミックス漫画文庫 す 1-2)

価格: ¥560
カテゴリ: 文庫
ブランド: 幻冬舎コミックス
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 「犀川・萌絵」シリーズや「V」シリーズなどの作品で、独自の本格推理小説の世界を構築してきた作者による、書き下ろし長編小説。以前に上梓された『女王の百年密室』の続編である。本書を手にする前に、あらかじめ前作を読んでおいたほうが、より深くこの物語を堪能できるだろう。

   現代より1世紀ほどの未来。主人公でジャーナリストのサエバ・ミチルと、パートナーのロイディが今回訪れるのは、海原に浮かぶ城塞都市「イル・サン・ジャック」だ。一夜にして海に取り囲まれたという伝説があるこの街は、女王メグツシュッカのもと、外部との接触をほとんど拒否している謎めいた街である。宮殿を取材で訪れたミチルたちの前で、僧侶クラウドの首なし死体が発見され、ミチルが犯人と疑われてしまう。

   今回の舞台となる城塞都市も、美しい女王が統治する平和で豊かなユートピアだが、同時に中世のイメージ漂う閉塞した世界でもある。しかし前作といささか趣が異なるのは、殺人事件そのものはあまりストーリーの根幹に関わらないといった点だろう。それよりはむしろ、都市自体を動かす社会システムの秘密や、「肉体と精神の関係」といったような哲学的なテーマがこの物語を色濃く覆っている。殺人事件の真相も、そしてミチル自身の秘密もその延長上で静かに語られ、やがてその謎が解き明かされていく。すべてが白日の下にさらされたとき、この作品を単純にミステリーと呼んでいいのか。形而上学的な内容と雰囲気、そしてそれらを形作る透明で詩的な文体が、読み終わった後にそう問いかけてくる。(文月 達)