天才とは?
★★★★☆
道端に落ちていた皇なつきの漫画版を読んで、「なんでただの衝動的殺人犯が天才扱いされるんだ!」と、腹を立てて、この作者のアンチになったが、数冊読んでいくうちに、作者の思想に取り込まれてしまった。97年前後のゲームバブルでわけわからん商品が氾濫し、不景気を束の間ごまかしていた時代に、「趣味と仕事は同じだ」と探偵役に言わせたのは先見の明か…。
この小説の犯人が天才とすると、あの宮崎勤も天才ということになるのだが、それについては作者も登場人物の口を借りて反論している。しかし、本心はどうでもいい人間よりインスピレーションにすべてを捧ぐ者に重きを置いているようである。
森先生の小説はミステリーとしてのタネはどうでもよく、本筋から離れた考察を楽しむ類のようだ。作者の天才信仰は処女作から始まって最後まで一貫しているが、この小説は天才については上手に語れていない。(同僚からの嫉妬がこわくて成績をごまかした程度なので…)
皇なつき氏だから読んじゃったけど。でっていうミステリー(誰かが死んで皆犯人探しに躍起になる話)
★★★☆☆
表紙を見てまた半分ほど読んで、これは80年代〜90年代初めの作品だろうと思いこんでいた(原作がそうなのかも)。携帯電話は存在しない、「ハイテク」な「トランシーバー」。今世紀だったらピンク・ハウスじゃなくてゴスロリだし(高価な服を着ている彼が裕福な家の子供だと言うのが一番納得できそう)、今「結束バンド」(インシュロック)はホームセンターで買える。つまり道具立てがいちいち古いんだが、それをいま、氏の美麗絵でコミック化する意味が分からない。思い出用?私には中途半端な昔過ぎた、もっと新しくて珍しい道具立てが見たかった。ノリきれなかったのは、もともとがサスペンスドラマやミステリー小説に興味が無いせいもあるのだが(あやしくない人物にあたりをつけたら犯人が当たる)。最後は身近な人物に傷つけられたのにケロリとしている大学生達、刃物を持った十四歳……あれ?どうなった?後半の多くの部分を占める連続殺人犯の手前勝手な長い御託もやや苦痛だった。デ○ノートの犯人の御託の方がまだいけるし、意外な犯人のクリミナル・マインド的な妄想が、ちょうど見過ぎていて腹いっぱいだったせい、かな……。登場人物の紅子が嫌うように、作中の犯人は私も嫌いだが、前半にもそういった「ヒトゴロシ」とは?「死刑」とは?という問答があって、結局作者のやりたかった部分はこの猟奇連続殺人犯の奇妙な論理という思いつき(思いつきというと軽すぎるのだが)なのじゃないかと思って、なんかもう作者の方も嫌いだ。また高校二年で理系コースをとっていないと謎掛けが分からない。ミステリー・ドラマに対し私が求めてるものが、鮮やかな犯人逮捕、警察官のガンバリだったことに気づいた作品。価格にしては分厚いのでお徳感あり。皇なつきファンならとりあえずイットケ。
雰囲気はよく出ている
★★★★☆
森博嗣の人気のVシリーズの漫画化。雰囲気がよく出てて紅子もなかなかいい。
でもあの一冊をよく一冊のコミックにしたなぁ。原作にもかなり忠実だし。
ファンじゃない立場で読むと
★★☆☆☆
初めて著者の小説を読みました。人に勧められて読んだので肩入れ無しの感想です。
独特の体裁、難解な登場人物の名前、妙な言い回し…映画版の監督、スカイクロラの押井守氏が著者の小説を好きそうなのは理解できました。
トリックの内容からミステリー小説というよりは夢野久作らの「探偵小説」に属するのかもしれません。全体的に散らばめられたミスリードとそれに比べてあっけなさ過ぎる犯人の告白。難解な言葉に彩られながらも、実は単純なストーリー…小説の中の登場人物が謎に惑うのではなく、小説全体で読み手が煙に巻かれたような、そんな読後感でした。
前半から中盤までの不安感と最後の開放感、たしかにある種のカタルシスを感じますが、これが著者の真骨頂だとしたら…ちょっと人には勧められないかなぁ。
煙に巻くと言えば、他のシリーズは判りませんがこの本ではやたら喫煙者が登場してみんなでチェーンスモーキングしています。タバコの味を知らない私には、この小説の良さはまだ判らないみたいです。
Vシリーズの第1作目。テーマは男女関係?
★★★☆☆
森博嗣の新シリーズ。新キャラの紹介とラストの意外さのためにあるといっていい作品。それにしても、この展開には感心させられました。前作に比べて、ややミステリーっぽさが弱く、一条ゆかりの「有閑倶楽部」っぽい雰囲気。森さんのクールな雰囲気が好きなのですが、ドロドロした男女関係がテーマのシリーズらしく、星3つです。