社会に適合するということ
★★★☆☆
二十年前に死んだ恋人の夢に怯えていたN放送プロデューサーが事件に巻き込まれる。
個人の集合体である社会に適合していくには、装いながら生きていく必要性があるのでしょう。
「いずれにしても、人ほど、自分の皮膚を不安に感じる動物はいない。人は服を着る。そのうえ部屋に籠もる。家や城を築く。堀や城壁で取り囲む。さらには、村を作り、国を作る。そうして、社会というシールドを構築し、常に、その綻びに目を光らせ、直し続けるのだ。それが、人間という動物だろう。幾重にも及ぶかぶりものを一生脱がないまま、生きていこうとする」
クオリティが落ちていく
★★☆☆☆
Vシリーズを読み進めていますが、
多作のせいでしょうか・・・どんどんクオリティが落ちていきます。
キャラクターも暴走し始めている感じで、読後にガックリきました。
彼の「登場人物がこの文章を書いているのであって、彼は文章の素人だから、
つじつま合わなくてもしょうがない」的な言い訳感のあるコンセプトも、
どんどん鼻についてきます。
暇つぶしに読むにはいい作品でしょう。
タイトルばかりが目立つ、やや頭でっかち。
★★★☆☆
おそらく、シリーズものとして練無の特性を活かしたものが欲しかったのだろう。
なので、華やかな東京のテレビ局を舞台にしている点、いつも以上に軽快な文体も個人的には気にならない。
章ごとに挿入される引用文「不思議の国のアリス」も、割と良かった。軽快なテンポとは良くマッチしているし、掛詞の面白さというのも本作と相性はいい。
しかし、読後の感慨深さはない。
タイトルとの連携に気を回しすぎていて、全体としての話の作りが粗く、テーマが伝わりにくい(この作品が気に入っている人にとっては、タイトルが巧くできていて、軽快な文章で読みやすい、となる部分ではある)。
推理小説として人物に納得できない行動が多い。
犯人も一見意外な気がするが、犯人と特定の人物以外は特筆すべき行動を起こしていないので、あっさりと分かるなど、残念な部分が多い。
勿体ない作品である。
そもそも、この内容は小説よりも、映像向きのシナリオに思える。テーマ、トリック、小道具、演出、どれも映像に向いている。逆に云うと、小説でなければならない理由はあまり感じられない。
シリーズ内作品でなかったなら、魅力は薄いだろう。
楽しいミステリィ
★★★★★
この「夢・出会い・魔性」は非常に軽快なミステリィです。
小鳥遊練無という人が好きな方にはたまらない作品でしょう。あの四人の個性が溢れているのも魅力です。
ミステリィのスマートさも見事ながら、ちょっとしたトリックは読む者を魅了します。
ネタバレになるから、あまり触れられませんが、明るく軽快で楽しいミステリィだと思いました。私の最も好きな作品の一つです。
タイトルも美しいと思います。ちょっとしたことですが、タイトルが面白い本もあまりないでしょう。
東京
★★★★☆
Vシリーズでは、那古野での事件が多く、愛知県警の刑事さんたちの描写も楽しみでしたが、今度の舞台は東京。新しい東京の刑事さんたちとのからみは新鮮でした。あと、いつも那古野の街がさっぱりわかりませんが、東京駅のことなど、関東人にはよくわかるし、関東の読者へのサービスですかね。