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日曜日たち (講談社文庫)

価格: ¥484
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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   東京で暮らす若者たちの、さまざまな「日曜日」の情景を切り取った連作短編集。著者の吉田修一は、同居する5人の男女の生活を淡々とつづった『パレード』で第15回山本周五郎賞を受賞。また、日比谷公園を舞台に、偶然出会った女性との奇妙な関係を描いた『パーク・ライフ』で第127回芥川賞を受賞した。現代の若者の姿を、抑えた筆致で、さりげなく、かつ、リアルにとらえる作風に定評がある。本書もまた、若い世代独特のやるせなさや焦燥感を浮き彫りにした5編が並んでいる。

   30歳になる無職の男が、日曜日ごとに部屋を訪れていた恋人のことを思い出す「日曜日のエレベーター」。泥棒に侵入されたという友人の話を聞いた独り暮らしの女性が、まるで自分の身に降りかかったことのように恐怖を感じ始める「日曜日の被害者」。恋人の暴力に耐えかねたOLが、やがて自立支援センターに足を運ぶまでを描いた「日曜日たち」。都会で倦(う)み疲れた主人公たちの物語には、共通した気だるさが漂っている。そんな主人公たちの人生が、少しだけ重なりあい、交差していく。

   その楔(くさび)となっているのが、彼らの過去に必ず登場するミステリアスな幼い兄弟である。「日曜日の新郎たち」の健吾は、家出してきた兄弟に寿司をおごってやり、「日曜日の運勢」の田端は、母親の住むアパートまで兄弟を送り届ける。兄弟とのささやかなふれあいが積み重なることで、閉塞した日常に、ほんのりと希望の光が差し込む。5編すべてを読み終えた後には、大切な人の死や、理不尽な暴力を受け入れながらも、「嫌なことばっかりだったわけではない」と言い切ることのできる、前向きでタフな若者たちが姿を現しているのである。(中島正敏)

鬱屈した毎日 ★★★★☆
鬱屈した毎日という表現が実にしっくりくる。
このようなどんよりした空気を創るのがすごくうまいなー
落ち込んでいるときに読むと、ますます落ち込みそう。
ただ、最後は爽快にまとめてくれていて、なんだか救われた気分になりました。
嫌なことばっかりだったわけではないと。 ★★☆☆☆
『嫌なことばっかりだったわけではないと乃里子は思う。
そう、嫌なことばっかりだったわけではないと。』

今の状況も振り返ると、
嫌なことばっかりだったわけではないと思う日が来るのだろうか。
特に何も残らない ★★★☆☆
5人の平坦な日曜日を描いた連作短編集。
大事故も殺人事件もない普通の日曜日、ということがウリの一つだとはわかるんだけど、
あまりにも中身がなさすぎやしませんかね。
「中身がないからこそリアリスティックなんだ」と言われたらおしまいですが。

短編集のそれぞれに、とある兄弟をそっと出現させてみたらどうだろう?と
作者が急に思いつき、それをとりあえず形にしてみた、という印象です。
変に技巧的な感が拭えません。
少なくとも、講談社の「青春小説フェア」なる帯につられて購入した私には合いませんでした。

ただ、最後の「日曜日たち」だけは素直に良いと思えました。
あと表紙の男性が平井堅に異常に似てると思います。
素敵な一冊だと思った。 ★★★★☆
 狭い了見なのだけれど、「寂しくない奴は本なんか読まないんだ。」と思っている。
 そんな読者には、吉田修一は時々心に沁みる。
 作り過ぎているところがある。パーツとエピソードがきっちり収まり過ぎているところがある。そんな欠点がとても惜しい。やり過ぎなきゃいいのに、と思ったりもする。
 登場人物たちは、社会の底辺部に近い場所にいる。だらしがなくて、どうしようもない。でも、結構賢かったりする。その辺も少しだけ嘘臭い。だらしが無い奴は、嘘つきで卑怯で、どこまでも取るところが無い。その方が圧倒的に多いはずなのに、ここにいる連中は、みんなだらしないはずなのに、たくましく、どこか誠実で、頭がいい。嘘だよ、と思ったりする。
 でも、社会の安定と王道と主流にいなくて、すっかりだらしなくても、誠実な人も、賢い人も、素敵な人もいる。素敵な人・・・・うん、吉田修一は、弱いけれど素敵な人、弱かったはずなのに、何だかその人の一部を信じて身を寄せたくなるような、そんな人を描いてくれる。そこが魅力なのかな。

 縦軸と横軸。連作短編にそんな趣向を凝らすというのは、発想はしやすい。でも、実際に行われたものはほとんど無い。でも、この短編集は、それをやってくれた。無茶苦茶響いてくるってものでもない。正直、思い付きだけで、物語に取ってつけたような、単純な物語にそんな安直な手法で色を付けたような、そんな感じすらしながら読み進む。
 でも、最終話「日曜日たち」は、僕には圧巻だった。主すじの物語も見事に書けていたし、各話を横に結ぶ横糸も、ここで見事に結ばれた。金も持たず都会をさまよう幼い兄弟がこの数日間、何を食べていたのかと尋ねられて答える場面がある。彼らは、「(兄が万引きした)パンと、たこ焼きと、すし。」と答える。変な取り合わせだ。聞いた瞬間、あり得ないとすら思う。でも、そこには真実がある。真実しかない。真実は、「飢えた兄弟は盗んだパンしか食えない」という答えしか与えないわけじゃない。でも、みんな、そんな答えがあることを思わない。
 登場人物たちは、みんなしぶとい。すごく悲しいくせに、しぶとい。それに心打たれるのだろうな。「嫌なことばっかりでもなかったと思う。」というつぶやきは見事だ。青空を見ながら堂々と言うのではなく、寂しさの塊の中に包まれつつ、でも、正直にそうつぶやける。それでいいのだなと、思わせられる。読み終わって、素敵な一冊だと思った。いい作家だと思う。
都会の若者の孤独、焦燥感に、一筋の耀きを感じる作品 ★★★☆☆
東京で暮らす若者のやり場のない不安感や焦燥感や孤独感を描かせたら吉田修一の右に出る作家はいない。本作も、定職につかないアルバイト男の恋愛や、付き合う女に次々に人生を振り回され続ける男や、上京して就職したものの気が付けば派遣会社に勤務し何時の間にか30半ばになっていた女性の話しなど、リアルで孤独な都会の若者を描いた5編の小編の連作からなる。

最初は、盛り上がりのない「吉田ワールド」の小品がダラダラと続くのかと多少のガッカリ感を感じるものの、読み進むうちに、この全く異なった5つの物語が実は母を訪ねて九州から家出してきた兄弟の物語に繋がっていくという構成に引き込まれていく。

何といっても最終話の「日曜日たち」が良い。上京して15年、都会の生活に敗れて帰郷する女性に最後の最後にささやかな出会いがあり、「嫌なことばかりだったわけではない」との女性の言葉が胸に染み入る。