テクニック、テクノロジーを追いかけ、振り回されること無く。
ソリューションとは何か。
テクノロジーは突き詰めたら、どういう効用があるのか。
そういうことをIT業界人、通信業界人は突き詰め、精進・修練を積んでいくべきなのだと。単純なようであるが、著者の一貫した継続とその鍛錬の結果、導き出された、設計から実装・運用に至るまでの洞察・思想・心得に満ちている。
一プロジェクトが終わった時に、わが身のあり方を振り返るのに良いだろう。
SIP、skypeのような新たなテクノロジーの意味合いを、それを具体的にネットワークづくりにどのように活かしていくか、そのようなことに考えを巡らせる際の心得、基本思想がここにある。
ネットワーク・エンジニアリングにとどまらず、IT系の営業・開発・プロジェクト管理などの仕事に携わる人たちにも、プラスになるだろう。
著者は、このような思想を、具体的なネットワーク革新の成果とともに、あるいは、顧客に語り、あるいは、講演で説いている。ユーザ企業がこのような認識に立っているという前提に立たなくてはならない。ベンダー・サービスプロバイダーは、そのことをよく認識して、仕事をしなければならない。
本書での思想に基づく根本的かつ厳しい問いかけに、その提案は、その製品は、そのサービスは、自信をもって応えられるか。この著作が拡がることで、ユーザ企業は賢くなり、厳しくなる。そこから、IT業界の、通信業界の、業界全体の底力の向上につながる。
救世の良書である。
さてこの本は大まかに、エッセイ、SEの仕事論、IPセントレックス技術、将来技術展望、の4つのテーマで構成されている。
エッセイも気楽に読めるようだが、これを読むと筆者がどのように最先端技術に取り組み、世間を先取りして大型案件を受注してきたか、その裏側までがよくわかり、示唆深いものとなっている。
また、技術的な部分は、長年ネットワーク業界に身を置き、技術の展開を見てきた筆者だからこその表現や理解がみられ、単純な技術説明の書籍とは一線を画している。
どの部分も密度は濃いが、バラエティーに富んでいてあっという間に読めてしまう。
美味しい料理を出すレストランほど、そのレストランでの時間があっという間に過ぎてしまうのと同じだ。
この本は、どのテーマも手が抜かれていることはなく、それぞれがその役割を十二分に発揮し、読者を楽しませながら元気の源になってくれる。