最後のほうまで読まないと分かりにくいのですが、本作はSF/伝奇小説です。“日本古代史が事実だったら”というifを元に世界(物語ではなくまさに世界そのもの)を構築したのが本作。
ウルトラモササウルスや始皇帝陵の地下遺跡、ピラミッドの内部、富士山麓の古代遺跡などは恐らく架空のもので、それらは全て先に挙げた日本古代史を補強するための創作でしょう。龍の存在ただ1つを創作した高橋克彦『竜の柩』とはそこが決定的に異なっています。
逆に言えば大嘘を成立させるために膨大な情報(虚実取り混ぜて)を詰め込んだ、ともいえるでしょう。
次から次へと出てくる資料や言説が史実か架空のものか、真実か世迷い言かを峻別するには日本史、哲学、科学知識など、相当の知的レベルが要求されるので、本書を娯楽小作品として楽しめなかったのは単に私がアホなだけなのかもしれませんが…。