意地の悪い見方だが、女優のヴィヴィカ・フォックスが50セントと付き合うことを決心したときも同じ心境だったに違いない。そもそも、トライスの友人を総動員したオール・スター・キャストがトライス本人よりずっと目立っているのだ。エミネムは「Lady」で女嫌いどもを黙らせるヴァースを披露し、ドクター・ドレーは「S*** Hits The Fan」のすさまじいキーボードのループとジャ・ルールを攻撃したライムでおおいに腕をふるい、Gユニットの盟友ロイド・バンクスはニヒリスティックな「We All Die One Day」に割り込んで暴れ回る。トライスはVIPを大勢招きすぎたのではないかと思ってしまうほどの顔ぶれだ。
マーケティング上のあらゆる可能性を視野に置くシェイディ・レコードは、トライスが独特のユーモアのセンスを発揮できる余地を残しておいた。キャッチーなシンセをあしらった激しいクラブ・チューン「Got Some Teeth」と、どこか自伝的な「Follow My Life」がそれだ。とりわけ前者に言えることだが、酒の勢いでセックス目当てに次々と女性に電話をかけまくるという内容なのに、酔いのさめた朝に聴いても嫌悪感がないのはさすがだ。
ネイト・ドッグとコラボレートした2曲(「The Set Up」と「Look In My Eyes」)は、予想どおりラジオで人気の出そうな、より気軽に楽しめるチューンとなっているが、同時にトライスのMCとしての実力がかろうじて水準以上というレベルでしかないことを暴露してもいる。50セントよりもD12に近い内容を持つ本作だが、両者の長所を合わせて余りあるぐらいのクオリティーが欲しかった。(Dalton Higgins, Amazon.com)