この物語で重要な役割をになう“壊れたテレビ”は、ガールフレンドのシモンがスキナーに隠れて親友のダンとデートしているという危険信号として、アルバム全体を通じて引用されている。昼メロのように聞こえるかもしれないが、さまざまな工夫で奥行きが加わっているのだ。たとえば、細部にまで気を配った歌詞(「Such a Twat」では「彼女はマクドナルドの駐車場で、白シャツを着た男と一緒にいた」と口ずさんでる)や、リリックの内容に沿った構成のサウンド(「Blinded by the Light」ではハイハットや効果音やピアノの音で、エクスタシーを服用した体験を表現)、心の内をさらけだすあからさまさ(激しい愛を語った美しい叙情詩「I Wouldn't Have it Any Other Way」や心を締めつける別れの歌「Dry Your Eyes」)がそうだ。
サウンド面について言えば、ブレイクとビートは前作『Original Pirate Material』によく似たスタイルだ――都会的で変則的なドラムのループ、シンセ、クラシック風のストリングス。だがファースト・シングルの「Fit But You Know it」はその例外で、パンクなギターと揺るぎないビートがリリックの内容と同じく、このトラックを疾走させている。本作を巡っていろいろなことが書きたてられるだろう――ここ最近のコンセプト・アルバムの中で傑出しているだけでなく、その語り口の複雑さと生々しい感情の揺れは、リスナーに考えさせる材料をいくつもあたえ、注意深く耳を傾けさせずにはいられないのだ。(David Trueman, Amazon.co.uk)