著者はイチローをはじめ、オリックスや京大アメフトチーム、プロテニス選手などのスポーツ・ビジョン・トレーナー。ビジョン・トレーニングとは、目の機能を高めることでスポーツ選手の成績を向上させる試みである。1980年代にアメリカで生まれたものだが、著者は長年にわたる指導と経験から、視力である「外の眼」と、意識内の視覚を意味する「内の眼」といった、眼のより一般的な働きに注目して独自の理論を築き上げた。
なかでも興味深いのは、眼の使い方と性格や体調を関係づけた「ビジョン・メンタル・チャート」である。簡単な眼科検診をするだけで、視野の広さ、意識のタイプ、他者と自己への注意力、現実に対する集中力などが、外の眼と内の眼のそれぞれについて図式化される。このチャートを見れば、自分の眼のタイプと性格の傾向が即座に理解できるだろう。
ほかにも、眼で脳を開発するビジョン・トレーニングや、眼のリラクゼーション、自分でもできる簡単な眼のチェック法など、実用的で役に立つ情報が収録されている。けがをしやすいといったことから人間関係に至るまで、眼の使い方には日常の悩みを解決するヒントがたくさん含まれていることがよくわかる。(齋藤聡海)