動物の愛らしさと風変りな形態描写 江戸の絵師 恐るべし
★★★★☆
理屈抜きに江戸絵画に登場した動物の百態を楽しめるような企画になっています。江戸時代に描かれた動物の愛らしさは、時代を超えて現代に伝わってきます。多分それは洋の東西を問わず、見る者を魅了するものでしょうし、何かしら我々に語りかけているようでした。そんな可愛い動物の様々な形態を描写した作品の集大成のようなムックです。
筆者の内山淳一氏は、東北大学大学院文学研究科修士課程修了した方で、仙台市博物館学芸員を経て、現在は仙台市教育委員会生涯学習課主査に就いています。しっかりとした近世絵画史の学識に裏付けられた解説ですので、安心して読み進めることができました。
伊藤若冲、円山応挙、葛飾北斎、歌川広重、長沢芦雪、喜多川歌麿、歌川国芳、司馬江漢、狩野探幽、など江戸時代を代表する絵師の代表的な作品が取り上げられていますので、オリジナルの作品の持つ意味合いを考えながら動物の百態を眺めていました。特に、伊藤若冲の有名なマス目書きによる「樹花鳥獣図屏風」のユニークさは、現代の感覚や西洋画の技法と比較しても斬新ですし、個性的です。同じく若冲の「百犬図」の可愛らしさは特筆すべきもので、現代のペットのイラストに通じる感覚で描かれていました。現代の図案鑑賞の感覚で眺めてみても遜色はない出来栄えですし、時代を超えてその魅力がダイレクトに伝わってきます。
章だては、動物大集合涅槃図と十二支・群獣図、動物画のいろいろ実写とその意味、江戸のペット事情昔も人気は犬と猫、ふしぎな動物たち珍獣から人魚まで、動物をきわめるこれがホンモノだ!、象が来た、龍が出た、人魚を見た!江戸の不思議発見物語となっています。「動物奇想天外」というタイトル通りの珍しい図案を描いた作品ばかりでしたね。