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藤田嗣治「異邦人」の生涯 (講談社文庫)

価格: ¥751
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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藤田嗣治を知る上で読んでおくべき書 ★★★★☆
近年「藤田嗣治」展を鑑賞できる機会が多くなったのは幸いです。本書にもそのあたりの事情が書かれていますが、エコール・ド・パリの寵児となった彼の生涯を深く知りたいと思い本書を購入しました。藤田は世界で一番有名な日本人画家でしょう。「乳白色の肌」と評される作風を確立したパリ時代も本書で丁寧に記されています。戦後フランスに帰化し、レオナール・フジタになったわけですからコスモポリタンとも言えます。

筆者の近藤史人氏は、NHKの番組制作の過程を通して本書を書きあげました。
幼少の頃のエピソードからスタートして、フランスで活躍しその後凱旋帰国し、戦時中の軍への協力姿勢が戦後に批判を浴びたことも詳細に書かれています。藤田の父親が軍医、それも中将格の高官だったという家柄も影響したのは間違いありません。

戦争画「アッツ島玉砕」が270ページに掲載してあります。美術館でこの作品と対峙した時にその壮絶さに慄きましたが、宗教画のような静謐さも伝わる不思議な大作でした。
藤田への戦争責任論は、日本人画家として西欧で認められたことに対する画壇における嫉妬もあったと思われます。そのため、世界的な才能を持った画家が二度と日本の地を踏まなかったのは至極残念でなりません。

藤田は相当器用な画家で、作風は年代毎にガラッと変ります。評伝の最後にも記されていますが、晩年パリに戻って帰化し、教会を自分で設計します。宗教画や子供をモティーフに絵画を制作したあたりをもう少し詳細に書いていただくとまた違った藤田嗣治像が見えてきます。ポップアートの先駆けのような面白さを秘めた画風もまたレオナール・フジタの魅力ですので。
より前進しているが、藤田は本書よりもすごい画家だ ★★★★☆
従来の藤田観に比べれば、生身の藤田に肉薄していると思う。
ただし、著者の拠って立つスタンスは不明瞭に感じる。
夫人の記憶や意見を、著者自身の藤田観にどう位置付けるのか、戦争画をどう位置付けるのか、そういった点で、著者の意思は感じられない。

国立近代美術館の「アッツ島玉砕」という作品をみると、藤田の戦争画は、とても本書に書かれている程度の位置付けとは思えない、藤田の心の深淵に踏み込む最重要テーマだと思うのだが、その疑問はいまだ解消されていない。
本の評価 ★★★★★
あくまで本の評価ですが、藤田嗣治という画家に興味が持てる、おもしろいという意味で純粋に満点。
著述内容の真偽については今となってはわからない部分も多いのですが、「藤田もしくは君代夫人よりの内容」と評価するのがそもそも疑問に思います。
実際そのとおり藤田よりの内容なんですが、長い間「評伝 藤田嗣治」にて随分と否定的な藤田像がまかり通っていたので、その反対側の話も出てちょうどいいのではないかと。
日本人に過小評価されていたのも、藤田が芸術家であるがゆえに当時閉鎖的であった画壇に目の敵にされて、戦争画のスキャンダルを口実に結果的に日本を追われたというこの本の話のほうがいかにも真実っぽくてわかりやすい話。
藤田の戦争画を純粋に一絵画として評価するのと同じように、この本も一つの読み物として評価してみました。
いろいろ考えてしまった ★★★★☆
自分と異なる風貌や言動に対して拒絶したくなる気持ちは誰にでもあります。民族や地域と関係なしに人間がもつ本能だと思う。でも日本は寛容度がちょっと低いかもしれない。

藤田嗣治の変わった風貌や言動はかなりの抵抗感を与えたに違いない。現代でさえ、東京以外の町を彼が歩いていたら振り返ってしまうかもしれない。藤田夫人の証言に基づいた伝記なので、多少とも良いほうにバイアスがかかっているでしょう(感情移入のない伝記はないですが)。でも、死ぬまで作品制作に没頭した画家としての生き様のみで十分じゃないかと思うのです。他に何を要求すべきだったのでしょうか?

多くのフランス人形が取り囲むベッド、和風のアトリエ、晩年に多く書かれた生を感じない子供の絵。彼の寂しさが伝わってきます。本書の最後に出てくる遺品に関するエピソードもなかなか深い読後感を残します(ちょっとできすぎですが)。乳白色の肌でパリの花形画家に躍り出た時代、戦中の日本での時代、その後のパリでの生活、そして晩年。この本を読んでから絵をみると、また違った感動が押し寄せてきます。
早すぎた国際人。 ★★★☆☆
今ちょうど没後40周年記念の展覧会をやっています。
この本を読む前と、読んだ後、2回行ってきました。

画家としての藤田もさることながら、会場に再現されたアトリエの様子や、
手作りの衝立や陶器などの生活用品の数々から、私が感じた「なにか」
がわかるかな、と期待していたのですが。

エコール・ド・パリ時代の寵児藤田についての本は、真贋は別にしてたくさん
あると思いますが、私が興味を持ったのは、フランスに帰化してから。
それにしても、当時の(画壇に限らず)日本人の島国根性、嫉妬丸出しの
不当な評価のひどさときたら。

晩年のことが駆け足状態でちょっともの足りなかったのが残念でした。