日本を外から観察していた画家
★★★★☆
藤田のパトロンだった平野政吉のことを何か書いているかな、と思って読んだ。あては外れたけれど、〈いい物は、いつまでも生命を保ち、新しいといことである。私には東京に存在する徳川時代の遺物も昭和時代の東京を構成する一つとして見なおすことが出来る。銀座を歩くことよりも、場末の裏町が私に新しいものを見せてくれる。(中略)私の作もこうありたいものである。〉というような素敵な文章に出会えた。
また、交流のあったウトリロ(ユトリロ)やモディリアーニのことなども興味深く読んだ。ドランが「自動車というものは速力が面白いのであって、速力の出ないものは自動車ではない」と豪語して当時最先端のブガッティを乗りまわしていたなんてことをこの本で初めて知った。
日本と日本人に対する辛辣な言葉も随所にある。日本の外にいて、日本を最も愛した日本人だったのかもしれない。盛んに「日本画を勉強せよ」と説いている点も大いに頷けた。