春信はフェルメールに通じる
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本書の”まぎれる”という考えは、最終的には17世紀のオランダの画家・フェルメールに相通じるものがある。浮世絵と泰西名画をつなぐキーワードが、この”まぎれる”なのだ。詳しくは手前味噌だが、「宇宙に開かれた光の劇場」上野和男・著という本を読むのをお薦めする。フェルメールの「ギターを弾く女」と、鈴木春信の「蚊帳の外」の二つの絵をじっくり見比べてほしい。光と音が画面の両側から出て交差し真ん中で早川聞多氏のいう ”まぎれる”状態になっている。残念ながら早川氏自身、この浮世絵とフェルメールをつなぐキーワードが”まぎれる”であることを自覚してはいない。本書は早川氏自身が考えるように、単に春画の興味本位の解説書ではないのだが、早川氏の自覚以上に春画の守備範囲を逸脱した哲学書なのだ。光のエネルギーの物理学の哲学書と言っていい。フェルメールと春信は実に見えない赤い糸で連結しているのだ。