浮世絵版画における「錦絵」技法の大成者として知られている鈴木春信の作品の素晴らしさを世に知らしめようという企画のもとで出版されました。彼の春画も含めて海外に流出した作品を中心に丹念に追い求めて提示しています。オールカラーですし、冒頭に福田氏の解説を付した貴重な出版となっています。春信の画作遺存は日本国内では絶無に近いそうで、その大半が海外に流出してしまっているようです。
なお、筆者の福田和彦氏は、美術史家、日本庭園史家、写真家、映画評論家として多岐にわたって著作を世に問われた方です。

本書の6ページにも記載されていますが、春信の美人画は中性的で少女的な美人画です。明代の蘇州派の美人画様式を元に描いているようで、それが特徴となっています。
なお、本書の半分ほどは、春信の春画と彼の影響を受けた礒田湖龍斎の版画と春画となっています。筆者の福田和彦氏は、「読者に浮世絵版画の魅力を伝えたい啓蒙的な目的で執筆した」と書いています。

内容については、錦絵の創始者・鈴木春信、鷺娘、きもの絵版画、美人画撰、春信春画名品撰、春画「風流十二季の栄花」他、「青楼美人合わせ」撰、礒田湖龍斎について、春画「角力大全」他、春信「美人風俗画」撰、春信「春画」撰、という項目になっています。