狩野派の流れや全容を知るために
★★★★☆
狩野派の400年の歴史を俯瞰して眺められる書籍です。もっと知りたいシリーズはオールカラーでしかも廉価ということで多くの美術ファンから支持を集めています。
今回は、知っているようで良く分かっていない狩野派の全貌を知るためにしっかりと読み進め、その作品群を眺めました。
大好きな狩野永徳は探幽前史という扱いで、その子光信とセットで見開き2ページの扱いです。コンセプトが探幽と江戸狩野派ですから仕方がありませんが。祖父元信を始め、足利家の御用絵師だった狩野派のまさに頂点ともいうべき永徳は、そのスケールの大きさでみても絢爛豪華な装飾芸術の頂点を極めた天才絵師ですから、もう少し取り上げて欲しかったですね。
京都聚光院の書院を飾る国宝「四季花鳥図襖」、「唐獅子図屏風」、国宝「檜図屏風」が17ページに掲載してあります。その枝振りと太い幹も型破りの迫力は「怪々奇々」と評された通り、遠近感を無視した現代絵画に通ずる大胆な構図で、そのデフォルメされた枝のうねりが戦国という騒乱の世の姿を象徴しているように感じ取れる日本の宝です。
20ページには見開きで探幽の二条城の松鷹図襖がありますが、ボテっとした松は評価しづらいです。二条城は保存状態や作品の内容は別として、狩野探幽とその弟子の仕事を見るには最大の遺産とも言うべき作品群です。斎書きや波濤水禽図屏風などの作品に惹かれました。
本書に取り上げられた絵師は、山楽、山雪、永納、尚信、安信、久隅 守景、英 一蝶、常信、典信、栄信、養信、 章信、探信守道、了承、沖 一峨、一信、河鍋 暁斎、芳崖でした。江戸時代の絵画を知る上には外せない流れです。