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河鍋暁斎 (岩波文庫)

価格: ¥972
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
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こんなに素晴らしいものが文庫で読めるとは! ★★★★★
本書は明治時代にお雇い外国人として来日し、鹿鳴館や上野博物館等を設計した建築家であると同時に、幕末から明治にかけて活躍した画家・河鍋暁斎に弟子であったジョサイア=コンドルが、師・暁斎の生涯やその技法について書いたものです。

技法の解説については、暁斎の解説というよりも日本画全般の解説になっており、専門家ではない読者にとってはやはりわからないところもありますが、それでも海外の画家との比較で色々と納得させられるところや得られる知識も多いですし、河鍋暁斎の生涯の解説は本当に面白いく(8歳の時に髑髏を拾ってきて写生した話とか笑)、図版も多くて嬉しい限りです。

実際に弟子として生活し、正確には師弟というよりも友人と言って良い程親しかったらしい人物が書くものですから、信憑性という点において本書は間違いないものでしょう。
また、お雇い外国人として帝国大学の名誉教授になるような人物と、当時の天才画家という関係だけでも、十分に面白い内容であると思います。

さらに、豊富な訳注が読者の理解を助けてくれますし(素晴らしい文章に素晴らしい注がのっかった感じです)、訳者による巻末のコンドル自身の解説も面白く、この部分だけでも読む価値が十分あります。

河鍋暁斎に興味を持った人であれば誰にでも読む価値があると言える名著です。
鹿鳴館を創った男コンドルと天才画家河鍋暁斎 ★★★★★
幕末明治期の天才画家と呼ばれている河鍋暁斎を知るうえには避けて通れない第一級の著作です。
暁斎の元に弟子入りし、「暁英」の画号を与えてもらったお雇い外国人建築家ジョサイア コンドルの卓越した観察眼に驚くと共に、当時の日本人が残し得なかった貴重な情報が綴られており、読み進めるたびにこのコンドルの残した著作の意味合いが見えてきました。天才画家とお雇い外国人との不思議な関係だけでなく、日本画を描くうえで必要な技法や顔料・染料、工程など実に興味深い事柄が記載してありました。

明治のお雇い外国人の文章を過去にいくつか読んだことがあるのですが、その大部分がエトランゼによる日本の印象記のようで、その域を越えないものばかりでしたが、本書は全く違いました。読めば読むほど驚嘆すべき詳細な説明で、本格的な日本画を描くにあたっての教科書のような内容と体裁を持っています。章立てを読むだけでその記述の確かさが伺えるとは思いますが、実に見事な描写ぶりでした。章立てを記しますと、暁斎の生涯、画材について、画法について、技法の実例、書名と印章、暁斎画コレクションとなっています。

河鍋暁斎の「十七世紀大和美人図」(部分)がカラーで掲載されていますし、第6章の暁斎画コレクションでは、魅力的な作品が白黒ではありますが、数十点掲載されているのはありがたいことです。訳注が18頁、暁斎・コンドル略年譜が16頁、コンドルの日本研究−訳者解説に代えて、が34頁と実に丁寧な編集になっています。

本書の訳出、訳注、解説、略年譜を作成された山口静一氏の業績のお蔭で、なかなか知るよしもない事柄を勉強させていただきました。これを名著と言わずとして何を挙げられようか、という心境です。
コンドルに感謝したい ★★★★★
明治のお雇い外国人コンドル(上野博物館、鹿鳴館、ニコライ堂、旧岩崎邸などを設計、岩手銀行や東京駅舎を設計した辰野金吾らを育てた)が、河鍋暁斎の弟子だったことをこの本で知った。

英国人が書いたのだから、勘違い的オリエンタリズムに満ちているのだろうと思いきや、まったくそうではない。
東洋的神秘(という言い方が悪しきオリエンタリズムに陥っていますね)を西洋的合理主義で記録した本書は、河鍋暁斎鑑賞のみならず、日本画を鑑賞したり、制作したりするうえで本書は大いに役立つ。

お雇い外国人の多くがサッサと日本を引き上げたのに対して、コンドルは没するまで日本に居座った。そして、洋風建築ばかりか、こんな素晴らしい本まで残してくれた。感謝してもしきれない。
待望の文庫化 ★★★★★
河鍋暁斎の弟子暁英(=ジョサイア・コンドル)による、「PAINTINGS AND STUDIES BY KAWANABE KYOSAI」の邦訳。
1984年に河鍋暁斎記念美術館から山口静一訳による『河鍋暁斎-本画と画稿』が発行されていたが、高価なこともあり購入はしていなかった。

本著は基本的に内容は同じだが、十分の一の値段で、しかも20年前の誤りは正され、新たに解説が記載されている。弟子にる暁斎の画法紹介は丁寧であり、図版も多い。
暁斎による美人画をトリミングした表紙も素敵で、暁斎入門者にも、更に深く知りたいというファンにも格好の書物であり、何より貴重な文庫化であると思う。自信を持ってお勧めしたい。
絶版にならずに、長く愛されたいと願う本である。