原風景への誘い
★★★★☆
玉堂の絵が日本画という枠組みから自由に飛翔して
時代を越え広く日本人の琴線に触れるのは、
温暖湿潤な気候に育まれた深みと潤いの豊かな自然風景と、
そこに暮らす人々の飾らない日常がありのままに描かれていることで、
鑑賞者の胸の奥に畳み仕舞われた日本人としての系譜に
無理なく染み通ってくるからではないかという気がする。
本書は代表作約80点を収録し、
草薙氏の控えめな解釈と鑑賞ポイントを付記した良書。
惜しむらくは「早乙女」や「夏川」など
一部分(人物部分)のみを拡大して収録している作品もあり、
別に全体をも載せて欲しかった。