人は、誰でも民家です。
友達は、仕事ではありません。
大切なものは、どこにでもあります。
それを壊さないで下さい。
そのままがいいです。
私の幸せは、いのち・・・・・・

北海道から沖縄まで105の民家が収録してあり、いずれも長年の風雪に耐え、激動の時代を経てきた建造物ですから、存在自体が文化財級の価値があります。外観と内部の写真からその見事さを垣間見ることになります。非常にバラエティに富んだ民家が残っていることに改めて驚きました。そこには昔から人々の日々の営みがあったわけで、風土の厳しさや生活の厳しさを感じさせる物でもありました。

筆者の高井潔氏はフリーのカメラマンとして全国の民家を数多く撮影してきたこの道のプロフェッショナルで、民家写真の第一人者だと思っています。その素晴らしい写真は当然としても、建築史や民俗史の知識がいるような豊富な事例に基づく解説は、それぞれの違いと特徴を分かりやすく説明しており、門外漢にも納得のいく記述でした。

民家と言っても、農家もあれば商家もあるし、元々武家屋敷であったり、公家の屋敷を移築したものまであり、構造も間取りも門構えも実に多様です。地域性は当然として、居住者の身分や立場によって、当然内部の設えが変わってくるわけで、その違いを確認するのもまた興味を覚える箇所でした。

残すべき物が残らない時代です。保存と開発という狭間で先人の営みの証がどんどん消えていく時代でもあります。個人の力ではどうしようもありませんが、写真に残していくという活動もまた保存の大切さを世に知らしめるのに必要な働きだと思うのですが。

掲載した全ての民家の所在地の地図、住所、交通アクセス、公開・見学料の有無、文化財の指定、問合せ先などが書かれていますので、実際自分の目で確かめ、体験する際の参考になるように編集されています。

最新技術も真っ青のテクノロジーが満載の家屋技術が満載の日本の古い民家。それらを写真とともに学べる一冊。北国なら厳しい風雨・雪に耐えうるよう、海に近いなら風に強く、またその住む人の職種によって使いやすく工夫された数々の手法には驚嘆の連続です。