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病気はなぜ、あるのか―進化医学による新しい理解

価格: ¥4,536
カテゴリ: 単行本
ブランド: 新曜社
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   私たちの体はこんなにもうまくできた構造をしているのに、なぜ病気にかかりやすいのだろうか。本書は「ダーウィン医学」(=「進化医学」、チャールズ・ダーウィンの自然淘汰の理論)をベースにして、病気やケガ、老化など我々にとって身近で重要な問題を、2人の進化学者がわかりやすく解説したものである。 

   著者らは病気の原因として、防御、感染、新しい環境、遺伝子、設計上の妥協、進化の遺産の6つを挙げている。そして、それぞれのカテゴリーの中で、病理は真価を認められないある種の利益と関係しているという例を紹介している。人間にとって病気は憎むべき存在だという思い込みが、根底から覆されるような考え方である。

   たとえば、防御について言えば、色白の人が重度の肺炎にかかると、顔色がくすみ、ひどい咳をするだろう。この場合、くすみは欠陥があることの表れであり、咳は防御の表れである。欠陥を治すことは有益であるが、防御を妨げて、排除してしまうと、大変なことになる可能性がある。しかし、実際の医療の現場はまさに、防御を妨げるような治療法が行われているのである。我々の体は長い時間をかけて、種の繁栄に有利なように進化してきていて、さまざまな肉体の現象は、どれもこの目的を果たす上で有効なのである。

   医学を進化の視点で見ることは、病気の進化的起源を理解するのに役立ち、その知識は医学本来の目標を達成するのに大いに役立つ、と著者らは自信をもっている。そして、我々は本書を手にすることによって、彼らの自信に間違いがないことを知るだろう。(冴木なお)

病気を理解するための新しいアプローチ ★★★★★
本書の副題に出てくる‘Darwinian Medicine'は、翻訳すると「進化医学」とされる。

リチャード・ドーキンスによれば、生物個体とは遺伝子の乗るビークル(車)と極論することができるという。そのビークルは環境の変化に対応して進化する。そして進化の過程で、遺伝子が種の保存を目的としてプログラムの変更を行い、その結果、以前とは違ったビークルつまり生物個体が遺伝子によって設計・製作される。この個体は、ある流行したウイルスに耐性をもつ代わりに、それ以前には問題のなかった環境に弱くなるというわけだ。泥濘地のためにキャタピラが用意されていたが、舗装路が多くなったため高速走行用タイヤに差し替えられる。ところが、このタイヤでオフロードを走ることになると、パンクのリスクが一気に高まる。これがヒトが病気にかかる一つの理由であるというのが、本書のテーマである進化医学の主張する考えである(専門家の方、はしょった説明に腹を立てないでね!)。こうした生物の環境対応のための進化のプロセスを理解することが、病気の予防と治療に役立つというのだ。

本書は、近年にわかに注目を集める「進化医学」の原典というべきものだが、内容は極めて平易であり、実例をあげて素人にもわかりやすく解説されている。例えば、マラリアに感染した細胞を除去するために進化した遺伝子は、一方で鎌状赤血球性貧血症を生じさせる。そしてこの遺伝子は、マラリア原虫の潜むアフリカ地域の人々が多くもっている、といった具合である。この考え方は、遺伝子レベルでの病気の治療が始まろうとしている今日、極めて重要な示唆を与えてくれる。

著者は、あらゆる角度からこの進化医学による説明を試みており、内容は遺伝性の病気や感染症ばかりではなく、アレルギー、精神障害、そして嫉妬や妊娠といった性の問題にまで踏み込んでいる。本書が入門書とされる所以である。翻訳には、わが国の進化生物学の泰斗・長谷川眞理子先生ら三人が当たっており、さすがに日本語の表現も適確で読みやすい。

専門書としての扱いなので少部数印刷のためだと思うが、高価で、また地味でなかなかリアル書店ではお目にかかれない(それでも2009年の時点で7刷というのはすごいのだが)。このような本こそ、ネットで掘り起こされて、もっと多くの人に読まれるべきであろう。
進化医学の始まり ★★★★★
この書籍は英語圏でも広く読まれた進化医学の入門書です。
進化医学は、病気やその症状の進化論的な由来を考察し、それを治療にも利用しようとする試みだといっていいと思います。なお著者の一人ジョージ・ウィリアムズはいうまでもなく、群淘汰が進化の要因なのではなく、個体(包括適応度)が進化の単位であることを論証した進化学会の重鎮です。
他のレビューワーが書いていないことをあえて書くならば、やはり私たち個人は長い進化の過程では、遺伝子のヴィークルでしかないという、ドーキンスのテーマでしょうか。個人にとって高齢になって致死的な遺伝病でも、それが多元発現して若いときの適応度を上げるなら、そのような遺伝病は我々の遺伝子プールに残り続け、悲劇の病死は繰り返されるでしょう。
遺伝子治療も含めて、生命科学に携わる人にはぜひとも一読してほしい本です。
進化理論と医学のシナジー ★★★★★
本書は進化理論を医学の世界に導入し、
「病気はなぜ起きるか」ということに対して、科学的・医学的裏づけに基づいて鋭い洞察をしています。

初版年が少し古いですので、遺伝子の数など最新知識でアップデートすべき箇所はありますが、
この発想を取り入れることによって、病気の解明・治療がより一層進むことでしょう。

これまで医学が培ってきた「何が病気を起こすのか(what)」「どのように病気が起きるのか(how)」、
に加えて「なぜ病気が起きるのか(why)」を解明することで、
医学が寄り発展していくという著者の見識の高さは見事です。

「生まれ」と「育ち」との間のイデオロギー闘争にも似た不毛な論争ではなく、
病気に立ち向かうという適切な目的を達成するための記述内容ですので、安心して読むことができます。
そして、本書の見地からは、リチャード・ドーキンス、マット・リドレーらの、
ネオ・ダーウィニストらの知見がやはり正しいことがわかりました。
彼らは様々な批判を(特に社会科学者から)受けていきましたが、
医学という世界で認知されたことから、
これらの批判が自説を守りたいが故の科学的な根拠の無いものだということがよくわかりました。

ダーウィニアン医学への招待 ★★★★★
進化生物学で得られた知見を医学に応用するとどうなるかというコンセプトで新しく興ってきているのがダーウィニアン医学という学問領域である.この本は日本語で読める最良の案内書.著者のウィリアムズは有名な進化生物学者,ネッシーは精神医学の専門家でありかつダーウィニアン医学にも造詣が深い.

基本的に医学は病気を治療するための学問領域であり,そこでは当然ながらどういう仕組みで病気になるのかの(進化生物学で言う)至近因の分析が重要である.しかしでは何故そのような状況が進化してきたのかの究極因を考えることにより病気とは何であるのかがより深く理解できることになる.

最初に読んだときは本当に驚きの連続であった.おそらくほとんどの人にとっては今でもなじみの薄い分野であると思われる.しかしこの本は病気とは何かについての固定観念をひっくり返してくれる衝撃的な本である.

たとえば蚊に刺されると痒くなるのはもちろん蚊の唾液による化学反応のためであるが,では何故そういう反応を起こすような遺伝的な体質が進化したのか?おそらく蚊に刺されても痒くないヒトは蚊を追い払おうとせずより多く蚊に刺され,より伝染性の病気にかかりやすかったのではないだろうかというような議論が典型例である.

狩猟採集生活上ではほとんどの食物が食べられまいと進化した生物毒で防衛されていたはずだというのも言われてみれば納得.また病気の症状は病原体かホストかどちら側の適応であるのかを良く調べる必要がある,たとえば病気で熱が出るのも病原体を殺すための身体反応である可能性があるというのも普段あまり触れない考え方である.

訳も大変良い.是非一読をお勧めする.また原著の推薦コメントにあるように、もう一冊買って自分のホームドクターにも読んで欲しいと真剣に考えてしまう本である.

医学生の目から ★★★★★
進化論となぜ人は病気になるのか?を記した名著です。お腹が減ったり、病気になると黄疸の出る人っていますよね。僕もそうなのですが、この本はそんな疑問にも答えてくれます。いやむしろ答えるというよりは、そのことに対して仮説を投げかけているのかも知れません。一文から「慢性の結核患者は血液中の鉄分レベルが低いことが知られている。そのため医者は貧血を治そうとして鉄材を与えるが逆に病気を悪くしてしまう。」こんな事知ってましたか?この本は医学生となり読んできた本の中で一番のお気に入りです。この事を知ってい医師と知らない医師では天と地ほどの差があります。患者さんはみんな「なぜ自分はこんな病気になってしまったんだ?」と運命を呪っています。僕も病気になった時そうでした。そんな患者さんの疑問に答えることの出来る一冊だと思います。もちろんこの本に書いてある記述をそのまま患者さんに伝えるのは適切では無いと思いますが、この本を読んでなぜ人は病気になるのか?そして病気になることには何か意味があるのか?を自分の言葉で患者さんに伝えてあげてください。患者さんは自分の病気について常に不安を持っています。この本を読んでそんな患者さんの悩みを聞いて、優しく「Why we get sick」について答えられる医師になれる一冊です。