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患者の生き方―よりよい医療と人生の「患者学」のすすめ

価格: ¥1,785
カテゴリ: 単行本
ブランド: 春秋社
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   空前の大ブームとなった『ブラックジャックによろしく』の登場人物に実在のモデルがいる、という話は今ではすっかり有名だが、本書はそのうちのひとり、大和成和病院の南淵明宏による初のエッセイである。

   著者がこれまでに手掛けてきた困難な心臓手術と、患者の生死に直面した時の心情が描かれた内容で、テレビドラマ「ブラックジャックによろしく」(TBS系)さながらの緊迫感あふれる内容に仕上がっている。

   当然ながら、手術には失敗もあるわけだが、心臓手術においては、それはダイレクトに患者の死を意味する。これらの現実を包み隠さず吐露した点が、本書の最大の特徴であろう。亡くなった患者の亡霊におびえ、「自分は人殺しではないのか。自分が人の命を預かるという大それたことをしていいのだろうか」と思い悩む医師の生々しい姿は、きっと読者に衝撃を与えるに違いない。

   また、オーストラリアのセントビンセント病院で働いた経験から、日本の医療の問題点を鋭くえぐり出した内容も魅力である。医局という名の派閥に支配され、歪んでしまった日本の医療業界、現場経験の少ない医師が患者の尊い命を扱っているという現実…。『ブラックジャックによろしく』でも描かれていた問題点が、ここで再度提起されている。

   内容の中心はあくまでエッセイだが、第4章でまとめられた医者の選び方、付き合い方、著者が尊敬する医師の紹介などは、実用の点からも興味深い。医療に関心をもつすべての人におすすめしたい1冊である。(土井英司)