手軽な安心に手を出す前に
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主に健康食品の効果を科学的に検証する本です。ガンとの関係ではアガリスク茸、プロポリス、サプリメントを中心に検討されています。また、健康食品で発生した健康被害例や法規制の状況に触れ、最後にWHOが報告した食事と生活習慣病予防についての知見を紹介しています。
具体的な研究成果がやさしい言い回しで説明されており、文字が大きく行間も広いので、とても読みやすく感じました。
結論から言えば、健康食品と呼ばれる物を人が食べて科学的に効果が認められたことはありません。WHO報告によれば、生活習慣病を予防するには、野菜や果物を多めに取り、体を動かし、お酒は控えめにし、喫煙はしない、などの極めて常識的な健康法が述べられています。健康維持に王道はないことを改めて感じます。
本書の序章には、健康食品を利用しているガン患者の体験談が2例掲載されています。いずれも、健康食品の効果については半信半疑ながら、わずかな可能性に文字通り「賭けて」高額なお金を費やしている姿が描かれています。
健康な人ならまだしも、現在病に冒されている方が、科学的に薬効が認められない健康食品に一縷の望みを託し、高価な品を口にし続ける姿に、私はなんともやりきれない思いを抱きます。「これで治った!」という体験談に期待を寄せる患者の気持ちはとても良くわかりますが、残念ながら体験談に実証的な意味は何もありません。
健康食品を購入する本人が満足すればとやかく言う資格は誰にも無いのでしょうが、せめて本書の様な、科学的事実や効能を漂わせる広告の読み方をやさしく解説してくれる本を薦めてあげる事も、悪くないと思います。