ここで取り上げられているのは、ベネッセコーポレーション、アスクル、新日本製鐵、マブチモーター、日亜化学工業の計5ケースである。いずれも季刊誌「一橋ビジネスレビュー」に掲載されたものから選ばれ、新たに、執筆の意図や理論的背景、想定される議論のポイントなどが記されたティーチング・ノートが加えられている。更に一部のケースについては、読者を対象に行われた公開のケースディスカッションの内容も収録されている。各社の業態や規模、経営課題がそれぞれ異なっているため、数は少ないながらもバランスの取れたケース選定となっている。
本書は企業内研修などさまざまな使われ方を想定しているために、あえて設問を設けておらず、ティーチング・ノートもそれほど詳しくは書かれていない。しかし、恐らく大多数の読者は、ひとりで本書に取り組むのではないだろうか。日本企業を題材とした、質の高いビジネス・ケースを入手することは困難なため、本書や「一橋ビジネスレビュー」誌の取り組みは大変貴重である。それだけに、続刊では独習者を対象にティーチング・ノートをより充実させるなどの配慮をしてもらいたい。(戸田啓介)