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人物を読む 日本中世史―頼朝から信長へ (講談社選書メチエ)

価格: ¥632
カテゴリ: 単行本
ブランド: 講談社
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面白くかつ歴史学の知識も身につく ★★★★☆
 著者は、面白い日本史を描くためには人物史を活用すべきだと提案し、源頼朝から織田信長にいたる有名人物の評伝の形式をとって、対象人物への想いを共感をこめて語りつつも、同時に歴史学としての日本中世史の知識もしっかり教えてくれる。

 例えば源平の戦いの本質とは、全国各地の在地領主としての武士が、朝廷のくびきを脱して自立を勝ち取る過程にあったのであり、いわば在地領主達の独立戦争だったのだと説明する。源平の内乱の過程では全国各地の国衙レベルで、平清盛によるクーデターの小型版といえる変革が次々に発生したそうだが、こうした勢力が合従連衡を繰り返し、より大きな武装集団を形成していった過程こそ、この戦いの本質だという見解だ。そして、最後まで勝ち残った源頼朝が在地領主の新しい王に担がれて、幕府という権力が形成されたから、その後の中世史において在地領主としての武士が主役を演じることが可能になったのだという。

 また著者は、中央権力が実質上存在しなかった戦国時代に、再び天下統一の機運が生じたきっかけとして、法然に起源を持つ平易な称名念仏の教えが一般民衆に広く受容され、武士勢力に対抗し始めたことをあげている。分国や地域を超えて結びつく一向一揆に対抗するために、織田信長を先頭とする武士達は統一権力をめざして戦ったのだというのだ。私自身も以前、法然上人の開いた知恩院で早朝の勤行に参加して「南無阿弥陀仏」を繰り返す称名念仏の大合唱に心地よく陶酔したことがあるので、著者の考えに大変同感することができた。
著者の中世史への愛を感じる ★★★★☆
この著者はよっぽど中世史が好きなんだなあと感じる一書。
中世という時代そのものへの愛であり、中世史を彩る人々への愛でもあろうか。
ここまで好きなことを仕事に出来ると言うことは羨ましくも感じる(勿論、苦労はそれ以上にあろうが)。

源頼朝に始まり、織田信長に終わる8人の人物を中心に中世史を構築しようと言う野心的な試みである。源頼朝、法然、足利尊氏、織田信長といった有名人から九条道家、細川政元といった少し詳しい人ならば知っているかなという人物、三宝院満済のような誰それ?といった人物まで幅広い。
しかし、読了してみると、なかなか、著者の考える中世の各局面を代表する人物を集めたなあと人選に感心するところである。

この書の中世史観の中心となるのは王権論である。東の王権たる鎌倉幕府と西の王権たる朝廷、王権の統一を目指し、そして挫折し王権の縮小を図った室町時代、王権を乗り越えていった戦国時代。単なる人物史に終わらず、中世という時代の色を読み取ることが出来るように著述が構成されている。

王権論が著述の縦糸とすると、中世社会の各種の特長が緯糸である。鎌倉時代初期の御家人の価値観、中世の仏教界、朝廷の官途、御成敗式目の法的性格、戦国時代の上洛の意味づけといったところが紹介されている。この縦糸と緯糸を組み合わせることによって現代人の感覚ではわかりにくい中世という時代をとらえようと試みている。

一般書だからか、文体は軽いが、内容はなかなかに骨太である。
正直言って大学レベルの日本史の知識や素養がないと内容の理解は難しいように感じた。
歴史好きというより、歴史学好きの人に勧めたいところである。
内容が極めて難解 ★★★☆☆
日本の中世史は,世界に誇れる程に複雑怪奇である.これを何とか判り易くするために,八人を選び列伝体で書いてしまおうとの企画.一見魅力的だがこれがうまく行かない.なぜなら,例えば頼朝.この人物像を組み立てるだけの史料がない.あの暗い吾妻鏡しか使えないとしたら,頼朝計画は不可能になる.そしてこの本の中で頼朝は特に不可解である.別の言い方をすれば,この本を理解するには日本の中世史が判っている必要があるのでは,と思える程この本は難解である.要するにこの時代(信長を除く)の叙述に,列伝体は無理なのだ,と考えざるを得ない.但し,この本は索引がしっかりしているので,手許に置いておくだけの価値はあるだろう.折角の著者の博識が空回りに終ったのはかえすがえすも残念である.