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スカウト

価格: ¥1
カテゴリ: 単行本
ブランド: 講談社
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今年もまた ★★★★☆
今年のドラフトでもまた一人の高校生が泣いた。
相思相愛と噂された仲への強行氏名。
あのときのスカウト心境は、いかばかりか。
そんなスカウト心理が読める良書です。
職人が職人を書いた! ★★★★★
夢を売るプロ野球を、裏方として支えるスカウトという仕事にスポットをあてた作品。

入団する選手の側は、億単位の契約金を提示されたりして華やかだが、彼らを発掘するスカウトは、足を棒にして歩き回る地道な仕事だ。
特に、筆者が密着した木庭スカウトは、12球団でも最も金欠といえる広島カープ所属。当然、各球団がマークする大物スターには手が出せない。いかによそが目をつけない隠れた逸材を捜すか、まさに職人の領域である。

頑固職人のように自分のポリシーを貫き、透徹した視点でノンフィクションを書いてきた後藤氏だけに、老スカウトの仕事ぶりを、実に正確に描けている。

若いプロ野球ファンにもお勧めだが、往年のファンならば、衣笠、大野、川口、正田、高橋慶彦、達川・・・といった彼が発掘した選手の名前を見ているだけで楽しめるだろう。
何度読んでも飽きない。傑作!! ★★★★★
‘98年に発売された作品を文庫化したものである。

広島カープの創設直後からのスカウトであり、昭和50年代のカープ黄金時代を支えた数多くの選手を見出した男木庭教。衣笠、高橋慶彦、大野豊、金城基、長嶋清幸、川口和久…彼がスカウトし入団に関わった選手である。

カープは今もそうだが裕福な球団ではない。創設時には試合終了後に監督選手が球場前に並んで市民に募金(樽募金)を呼び掛けたほどである。当時の選手獲得は自由競争だったので、当然資金力のない広島は弱い。ドラフト制度が始まってからも資金力のハンデはなくなるわけではないので、多くの即戦力選手には手が出せない。そんな中、彼は黄金期を支える多くの選手を見出し入団させた「本物のスカウト」である。

彼はその後、請われて大洋等のスカウトとなり選手を発掘、取材時は日ハムのスカウトであった。著者はこの老スカウトの姿を3年の間、全国の高校・大学・社会人の試合を視て選手を吟味するという木庭の「日常」に同行し取材を続ける。その中で、彼の半生、成功も失敗も含めたスカウトの思い出、スカウト術の裏表などを聴き出す。というか彼の話を黙って聞いているような感じもする。そして、関係者にも取材を重ね彼の人間像を浮かび上がらせていく。

著者のどの作品でもそうだが彼は「取材のための取材」は行わない。主人公となる人物達の日常にそっと近づき雑談を繰り返す。そして、その中からキーとなる言葉を自然に引き出していく。行動を共にしたりするのだが、その人物のペースを乱すことなく一歩引いたところから見詰めている。著者には、主人公は取材をして作品を書く自分であるという気負いが全く感じられない。その人物をありのままに写し取っていく。

この野球を愛する老スカウトは、こういう姿勢で“人物”を描いてきた著者が出会った最良の素材である。この作品は間違いなく著者の代表作の一つである。
玄人が玄人を描いた傑作 ★★★★★
全ては金と人気次第という印象が強い現在のドラフトに対して、貧乏球団というハンディのなか、選手を見極める目はもちろん、人脈という泥臭いネットワークを駆使して無名選手を発掘し、親や選手を口説き落とし入団させるだけでなく、入団後も自分が入団した選手を気にかけていくという、一流の1人のスカウトを3年間取材して書かれたもの。
現在においても、下位指名選手はスカウトの目利きにかかっているのかもしれませんが、ここまでスカウトを極めた人はいるのでしょうか?(分業が進んだ今ではやりたくてもできないかもしれませんが・・・)
その名スカウトを描く著者の力量もすばらしい。衣笠や大野などのスカウトとしてのホームランだけにとらわれず、日々の地道な活動内容や、無名選手との親交も含め、淡々と、しかし、飽きさせない内容で書かれており、他の作品を読むのが非常に楽しみです。特に、作者の力量にとらわれず読むスポーツものよりも、どちらかというと興味が薄い医療ものが、どのような内容であるか非常に興味があり、今後の楽しみが増えました。
プロフェッショナルがプロ野球を作ってきたのだよ、オーナー諸君 ★★★★★
プロ野球が野球少年にとって憧れであり、ファンにとって胸が痛くなるような極上エンターテインメントである裏には、グラウンドの選手のみならず、それを支える無数のプロフェッショナルたちの存在があったのだ、ということを、著者は淡々と、克明に描き出している。オ-ナ-企業が直接には存在せず、無名の選手を超一流に磨き上げることを得意とした広島カープに、木庭スカウトのような人が存在した、という事実は重い。イチローがメジャ-リ-グ年間最多安打記録を塗り替え、日本では球団合併という未曾有の事態が発生し、史上初のプロ野球ストライキが決行された年に、この本に巡り会ったことは長く私の記憶に残るだろう。ピークを過ぎかけた人気選手や有名新人を金で買い叩く他に芸のない昨今の球団経営が、日本のフィールド・オブ・ドリームズをどんどん汚している。願わくは新しく球団経営に乗り出そうとするオーナーが、未来と理想を高く掲げて、真のプロフェッショナルとして行動されんことを。