克明に記されたランスの軌跡
★★★★☆
ランス・アームストロングのスバル・モンゴメリー時代から2009年ツールドフランス復帰までの軌跡を克明に記している。
レース実況はDVDを観ているファンにとっては目新しい内容は含まれいない。そのせいかかなり退屈な描写が続く。
レース描写と双璧を成すのが元チームメイトを中心にしたインタビュー集。こちらはランスのチームメイトへの振る舞いや、2009年復帰の周囲のとらえかたからツールドフランス運営サイドとランスのあからさまな対立などファンにとっても初見のものが多いはずだ。読んでみてからのお楽しみにしてほしい。
通底しているものはよくある極端なランス批判ないしランス称賛(信奉)のどちらでもない。陥りがちな二項対立から逃れられたのはランスから距離を置く人に対してのインタビューも交え、できるかぎり客観的に俯瞰してみた成果だろう。その結果、自転車競技へのランスの計り知れない貢献と批判称賛どちらも巻き込み飲み込んでしまうランスのスター性、それだけが残った。
結果としてランスの称賛サイド寄りの本と読めてしまう感は否めないが、それこそがスター選手の条件である以上やむを得ないのであろう。とりあえずランスファンは必読ではないだろうか。
アンチでも信者でもない
★★★☆☆
ランス・アームストロングについて書かれた本は、アンチか信者しか無い。だから公平な立場から書く、
という前提が冒頭に述べられ、記述はチームメイト(ショーン・イエーツ、ヴィアスチュラフ・エキモフなど)
や主治医、アンチ的立場を取るフランス人ジャーナリストなどへのインタビューを差し挟みながら、ほぼ
毎年のツールの流れを紹介する年代記的な書き方になっています。ランス自身の言葉は記者会見などで公に
なったものが中心で、この本のためのインタビュー、というのはできなかったようです。
その分簡潔でわかりやすくはなってますが、「ただマイヨジョーヌのためでなく」のようなランス節全開を
期待する向きにはあっさりしすぎかも。ランスに好意的な人へのインタビューがどうしても多くなるので、
アンチにも不満は出るでしょう。公平、という立場を取る以上仕方ないですが。
改めて読みたい1冊です
★★★★★
ランス・アームストロングに関する本は、ツール・ド・フランスを7連覇していた時代に何冊か出版されていましたが、4年ぶりにツールの出場を目指して復帰したことで、改めて注目されています。旧作を読むのも良いですが、これから初めて彼の著作を読むならば、最新のこの1冊がお薦めです。