天才レイ・チャールズの世界
★★★★☆
原書が出版されたのが79年。丁度「ブルース・ブラザーズ」出演の頃だろうか(私事だが、自分が初めて彼を知ったのも、この映画)何故その時に日本語版が出なかったのだろう。その頃でも既に世界的なミュージシャンだったのに。それはさておき、本書を読んで感じ入ったのは、彼のハンデをハンデと全く思わない意思の強さ。音楽に対しての飽くなき向上心。一見にこやかなステージ上の表情から思えない程の、まさにデビュー当時の異名「高僧」のような厳格さ。ドラッグや女性関係に対しても自らルールをきっちり守っていたのには感服する。それは万人に当てはまるか、出来るものではなく、不幸な生い立ちから、天与の才能(ジニアス!)と努力によって音楽の神様に祝福された「ブラザー・レイ」になったのだ、というのが本書を読んで唸る程に良く解った。映画「レイ」と併せて、彼を音源とは違う方向から知りたい方にはマストな一冊だろう。
レイ・チャールズが好きなすべての人に
★★★★★
ソウル草創期の巨人レイ・チャールズの自伝。
レイの音楽観ついてはもちろんのこと、アメリカ、宗教、人種差別、麻薬、女性と様々な分野について語られています。
ジェームス・ブラウンの自伝でも思いましたが、とにかく精神的にも肉体的にもタフで、
五十年代から六十年代にかけて黒人ミュージシャンが音楽の名声だけでなく、
ビジネスとしても成功することが、いかに大変だったのかが、
誇張されない等身大の言葉で綴られています。
その語り口は、派手なことを嫌う誠実な人柄が伺え、
レイ本人から直接語られているような気にさえなります。
レイの音楽に興味がある人は、ゴスペル(聖なる音楽)とブルース(俗なる音楽)の融合させるアイデアはいかにして生まれたのか、
カントリー(白人の音楽)を取り上げるのに黒人として葛藤はなかったのかなど、
その創作の秘密に少し触れられます。
レイの創作過程は、さまざまな音楽的な要素が交じり合い融合し、それが新しい音楽スタイルを生み出す要因となっています。
ただレイが影響を受けたミュージシャンの名前がたくさん出てくるので、
その人達の音楽を知らないとその核を理解するのが難しいかもしれません。
巻末に増補として、晩年のレイの様子が描かれていますが、
死を何よりも怖れていたレイの取り乱し方に、涙無しでは、とても読むことができません。
誰にでも平等に死は訪れるとは言うものの、盲目という闇の世界に生きたレイが、
死という無の世界へ導かれていく恐怖は、常人では想像を絶する心境だったのだろうと察します。
レイの音楽が好きで、また映画を観て、
少しでもその人物像に触れてみたいと思った方に、お勧めの本です。
レイをもっと知る為に
★★★★★
この本は、レイ・チャールズの自伝です。
映画で語られていなかった事が克明に書かれており、彼の本音や人柄が分ってくると思います。
また、クインシー・ジョーンズやミルト・ジャクソンなどの著名アーティストの名が沢山あり、彼の顔の広さに脱帽させられます。
ただ、巻末の作品リストで、90年代以降のアルバムも詳しく取り上げてほしかったです。
(おそらくページが足りなかったんだと思いますが……)
映画を観た後に読めば、レイ・チャールズという人物により興味が湧いてくるでしょう。
数ある自伝の中でも、特に読むのが楽しくなるものの一つだと私は思います。