潜入捜査官としてマフィアの一員になったヤンと、マフィアの指令で警官となったラウ。ふたりの壮絶な運命を描くシリーズ完結編。第1作のラストでヤンが死んだ後から、物語は始まる。マフィアとしての過去と決別したいラウが、警察内に潜んでいると思われる他のマフィアを探すうち、エリート警官のヨンと中国本土の武器商人の関係を怪しむ。
男たちの悲劇と衝撃シーンが相乗効果を上げた前2作とはうって変わり、今回はラウの心理ドラマに重点が置かれている。彼が向き合う現実とともに、前作で描かれなかったヤンの行動、ヤンの精神科医とラウのドラマ、さらにラウの幻想などが絡む重層的な展開だ。第1作で晴れわたっていた屋上が、どんよりとした曇天の下で再登場するなど、全体に陰鬱なムードで覆われ、アンディ・ラウの熱演とともに訪れる結末は今回も悲痛。前2作から過剰な期待を持って観ると物足りない部分があるかもしれないが、3部作全体を、この10年の香港の変化とだぶらせると、感慨もひとしお!(斉藤博昭)
レオン・ライとチェン・ダオミンら脇役の存在感。
★★★★★
月並みな言い方だが、とにかくこのシリーズはすばらしい作品です。
テーマやモチーフ、ストーリーに、演出、映像に俳優陣の卓越された演技。
この作品に関わったすべての人たちの“映画”に対するクールで
にえたぎる熱情さえ“ぐーっと”感じられる逸品!です。
なんて言うのかな、抑えめでありながらも、ひめたる強い魂というのかな、
ハリウッドのような分かりやすさではなく、それこそ“無間”という
言葉に代表される、人間の複雑で果てのない深遠な性質、というのが
よく表現されています。いわゆる、これが「アジア」らしさ、とも言うのでしょうか。
主役二人ももちろんすばらしいのですが、個人的にレオン・ライと
チェン・ダミオンにも拍手!特にレオン・ライのあの存在感はなんなんだろうなー。
知的で繊細そうでありながらも、底知れぬ男らしさ(野生やたくましさ)
を感じる。めちゃめちゃカッコよくないですか!?
チェン・ダミオンも、まさに大陸的アジアのオトコ、という雰囲気で釘付け。
同じアジアでも、日本人にはあんな雰囲気をだせる俳優なんて
正直一人もいないなー、と思いつつ、やっぱり大陸の迫力・香港の圧倒的な
映画制作レベルの高さを思い知った気もしました。
熱くなれた
★★★★★
スリルや緊迫感は1には劣るかもだけどインファナルアフェアの締めくくりには最高の作品だと思いました。
心理描写がわかりづらい気もしますが、このくらいの絡み具合と言うか演出の方がこの作品にはあってると思います。
個人的に納得できないのは最後のラウ自決未遂のシーン。
あからさまに重度の障害が残っても可笑しくないのに車椅子で登場した時の姿としゃべり方に「ねーよww」と。
それにしてもこのインファナルアフェアは3部そろって最高でした。
2部でサムとウォンが親しいわりに1部で案外サクっと殺したんだなぁと疑問も感じましたが、2終盤のサムの涙と3のヤンに対するサムの姿勢なんかを見ると、納得できなくもない。何はともあれ。インファナルアフェア、最高。
ちなみにインファナルアフェアをインファイナルアフェアと呼んでた俺乙
まさか・・・
★★★★★
人気作で基本的にハードボイルドなアクションを期待されてるはずの作品なんですが、
たくさんアクションはあるものの、物語の中心が最高の少女マンガと比べれるくらい
心理描写的で、心理描写も極限まで煮詰めると心理描写じゃなくなって、物語の最後
で「あ、やっぱり心理描写だったんだな」と思える、商業ラインや大人ラインでしか
物語を考えれない人には絶対えがけない、本当に自分に誠実になったときだけ書ける
物語、そんなものが売れないマンガ雑誌の片隅じゃなくてハリウッドにリメイクまで
された作品にあったのでびっくりしました。
物語全部が花のつぼみの中で起こり、視聴者はその中をゆっくり下りていき、最後に
めしべの足元まで降り立ったとき、一気にその世界という花が透明になって自分が花
のつぼみの中にいたことがわかる、この映画は透明だった。そしてそれを見ている自
分の席も透明なのだ。
いいかんじです。香港ノワール。
★★★★☆
「1」「2」と見てきて、かなり満足して、「3」をみました。
感心するのは、それぞれが続編でありながら、
独立した作品として自立していることです。
これは監督と脚本の努力と能力の結果なんでしょうね。
シリーズを通じて、撮影(美術などすべてを含む絵)と役者が
画面で輝いていて、
それだけで見る価値があります。
今回は、かなりアクロバットのような展開をしていきますが、
あまり堅苦しいことは思わずに、
このシリーズの流れに身を任せて、楽しみます。
精神科医の診療室でのラブシーン。
それを妄想だったと思ってしまう男と、
しっかりと受けとめている女の構図は、
美しく、哀しいです。
その部屋で、
潜入警官が最後まで彼女の前で自分を守り抜いたのに対して、
自らの究極の秘密をひと言、話してしまう潜入マフィアの対比。
その描き方などなど。
「完結篇」でありながら、ある意味、この3作目が、
シリーズの気配を色濃く持ちながらも
全体の”余韻”のようになっているところがニクイです。
策を弄しすぎた最終章
★★★☆☆
1作目が警察とマフィアに潜入した2人の苦痛と駆け引き、2作目は彼等が無間地獄に入るに至った因果とマフィアの仁義なき戦い(抗争)を中心に描いた傑作だった。それで3作目はというと、警察に潜入し生き残ったラウ(アンディ・ラウ)の警察内部での生き残り工作とマフィアに潜入した警官ヤン(トニー・レオン)の死の前後を交えて描いており、前2作を上回るできにするために色々な部分でかなり苦労した感はうかがえる。しかし、策を弄しすぎたのか、ラウの精神面を描くために死んだヤンや殉職したその上司のウォン(アンソニー・ウォン)を登場させてのラウの幻覚や、ラウとヤンを椅子に寝かせて見守る幻想を見る精神科医(ケリー・チャン)でヤンに対する思いを描写するところは明らかに作品のテンポを悪化させている。
また、警察の保安課のヨン(レオン・ライ)の警察での位置関係やマフィアとの関係がわかりにくい(新たに加わった人物であるためか?)。彼に関してはラストで全体像がはっきりするが、極秘任務に取り組む警官の間での友情が鍵となるところはあまりに唐突で設定に無理がある。
時間軸を過去と現在を交えた展開にしているのだから、余分な描写は削ぎ落としてラウの悪あがきとヨンとの対決に焦点を絞った方が良かったと思う。
作品としては1作目を尊重し丁寧に描いているものの、「ゴッドファーザー」と同様2作目までは傑作の粋だが、3作目は策を弄しすぎて普通の作品になってしまった感が強かった。