音声は、同時録音したラジオ放送用テープによる音源使用で、モノラル
ながら、この年代のライブという事を考えると、決して悪くない
音質です。この奇跡的な名演の素晴らしさを十分に味わえます。
ただ残念なのは、画質がそれ程改善されていない事でしょうか。
歴史的に大変貴重な記録なので、あまり贅沢は言えませんが、このDVDに
使用されたマスターは、以前に発売されたレーザーディスクと同一の
ようです。できればフィルム素材まで戻って、少しでもデジタル修復を
してもらいたかった、と言うのが素直な感想です。特にフィルムの
コマ間のがたつきは、最近のDVDで復刻された映画を見慣れている
私には、正直な話、かなり苦痛ですね。
NHKアーカイブスで使用している修復技術を使えば、大幅に見やすく
なると思うのですがねぇ。その点が、ちょっと残念ですね。
また歌役者、ゴッビがまた凄い。ヤーゴ=ゴッビというほどに、マッチしている、これは史上最高といわれる演技力があるからに他ならない。「乾杯の歌」「信条」どこをとっても素晴らしい。一人突っ走るデル・モナコに対してじつに計算された究極の舞台を見せるゴッビ。これが素晴らしい競演を見せるのだ。まさに「黄金コンビ」である。
この二人のおかげで、デズデモナ役のトゥッチはじめその他の歌手たちの印象が薄れてしまったのは惜しいかもしれない。でも、これはどう使用も出来ないこと、三大テノールのようなレベルの人たちを脇役に回すほか手はないだろう。
ここにあの素晴らしい歌声が重なるのです。ああ、幸せなひと時・・・
デル・モナコのあと、ドミンゴなどすぐれたオテロ役がいます。しかし、デル・モナコを聴いてしまうと、みな色褪せてしまいます。
また、語り古されたことですが、イヤーゴ役のゴッビがうまい!役者として、この人は最高です!
デズデモナが、デバルディだったらとか、ありえないのですが、リッチャレッリだったらなどと望むのは贅沢というものでしょう。トゥッチが好演しています。
半世紀近く前の古い映像です。音も今にしては貧弱です。しかし、それらを補って余りある感動がここにあります。