なつかしい風来坊 [DVD]
価格: ¥3,990
真面目で家族にも恵まれたインテリ公務員(有島一郎)が、ある日出会った風来坊の労務者(ハナ肇)と親しくなるが、ある事件がきっかけで、ふたりの友情は終わりを告げる…。
山田洋次監督が、小田急線の中で出会ったという男をモデルに創作した物語で、がさつで荒々しいが心根は純粋な労務者を、当時の山田作品レギュラーであるハナ肇がパワフルかつ繊細に好演。そんなハナの強烈なキャラクターと対局に当たるのが、有島一郎の公務員。体型からして対称的なふたりの芸達者のやりとりが大いに笑わせる第一級の喜劇であり、また誰の心に潜むエゴをさりげなく描いた、山田監督の人間観察の鋭さが光る一編である。
様々な事件を経て、ひとり八戸に単身赴任する公務員が、自分のもとを去った風来坊と自殺志願の女性(倍賞千恵子)に再会するラストのくだりは、山田監督自ら「甘すぎる」と厳しい自己評価をしているが、エゴ故に孤独になっていくこの映画の登場人物たちが救われる描写として、心地よい感動の涙を誘い秀逸。甘くて悪いか。(斉藤守彦)